Sensate Focus - Deviation Heat-treated

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  • 2012年はPANにとってもMark FellのSensate Focusにとっても大豊作となった一年でもあった。PANはダンスミュージックと実験的な電子音楽の中間を埋めるようなリリースを展開して賞賛を集め、Mark FellもまたEditions Megoの支援のもとPANと同様のダンスと実験の中間にある領域を追究しつづけてきた。その両者が手を組んでスペシャルなリミックス12インチを届けてくれた事実はまさしく手放しで歓迎すべきである。Fellは今回Heatsickによる、夏の幻影のようにあっけらかんとしたカシオトーン・ハウスで埋められた4曲入りEP「Deviation」をソース・マテリアルとしている。FellとHeatsickという組み合わせも実に興味深く、両者ともにハウス・ミュージックに対してアウトサイダー的な視点を持ちつつ、そのアウトプットはことごとく異なっている。Heatsickはロウファイ感たっぷりのぼろぼろとしたトラックを手掛けている一方、Fellはあくまでもクリーンでほぼ臨床検査的と呼べそうな精緻さを持ち合わせている。 この「Déviation Heat-treated」はあくまでもリミックス盤なので、そうした両者の手法における妥協点を見出すことに意義はない。したがって、Fellは存分に自身ならではのアプローチを展開している。両サイドにわたって、オリジナルの断片がところどころで顔を出し、分離されてSensate Focus的なプリズム構造を通して投影されていき、ダンスミュージック的な定型をにわかにほのめかしつつも、すぐにその予感は悪戯めかして熱い靄のなかへと消え去っていく。というわけで、この作品もいつものSensate Focusらしさそのものだ。非常に均整のとれた非対称のビート・パターンはクリスプなパーカッションで覆われ、マイクロ・レベルにまで断片化されたヴォイスとデジタル・オルガンがループされ、その上空では性急で人工的なパッドがだらしなく渦を巻いている。 とはいえ、FellがSensate Focusらしい明確な文法を拡大しようとしている部分も感じられる。これまでのシングルで聴かれたようなどちらかといえば抑制された構造を解放し、ひとつのパッケージとしての構造へと置き換えようとしている。ひとつのアイデアは種を植えられ、花を開きそして枯れていき、その後には新たな種が植えられる。とりわけAサイドの後半では、繊細なシンセが悪意に満ちた脳天を突き刺すようなピークを演出し、スムーズな展開を不意に断絶させる無慈悲な瞬間が見られる。
  • Tracklist
      A X B Y