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  • 多くの人々にとってMadteoの名をはじめて目にしたのはおそらく彼が2010年にWorkshopからリリースしたEPか、もしくはそれ以前にLanquid Musicでレフトフィールド系のラッパーSensationalとのコラボレーションですでにその名をチェックしていたリスナーもいるかもしれない。実際に彼がシーンにおけるその存在感を示しはじめるのはこの2013年になるだろう。そう、意志あるアウトサイダーたちがダンスミュージックへの興味深い接近を見せている今だ。こうした文脈が発生する以前から活動しているMatteo Ruzzonは、こうした動きがたとえこれから先下り坂になってもそのスタンスを変えることはないだろう。 しかるに、このニューヨーク在住のイタリア人が生み出す、あらゆる規範を逸脱したエキセントリックなテクノ/ハウス解釈が常に未知の領域へ向かおうとしていることは至極納得がいく。Mika Vainioをはじめとした厳粛な電子音楽をリリースしてきたことで知られるフィンランドのSähköは、Madteoのセカンド・アルバムをリリースする場としては意外だと言っても良いだろう。しかし、この新天地でRuzzonはこれまで続けてきたダンスフロアーからの脱却というアプローチを継続しつつもそれをさらに強め、多面的な手法を見せつけている。 とはいえ、それが直接このアルバム『Noi No』においてダンスフロアー的なトラックがフィーチャーされていないというわけではない(ただし、それにしたってかなり角がとれた粘着質なものだが)。"Dead Drop (When I Saw You That Nite)"といったトラック、そして非常に精巧な"Tanti, Maledetti e Sempre"といったトラック群はどこかニューヨークハウスのエッセンスを忍ばせながら、それらの要素はドロドロしたパッドや怒濤のようなハイハットのレイヤーの下に埋め込まれている。それでいて、沼のようでいて狙いすましたかのような"Il Capoline"、もしくは意外にもDrakeのサンプルを見事に援用した"Rugrats Don't Techno For An Answer"などのトラックではそのキックドラムは非常に奇妙な瞬間を引き立てるようにも用いられている。しばしばドラムが抜け殻を残してまったく消え去ってしまう瞬間もあるが、そこには驚くほど官能的なシンセ・ワークが浮かび上がってくる。 これほどの多様性を持ちながらも、Ruzzonはあくまでもジャンル横断者と呼ばれる類のプロデューサーではない。これらのトラックは彼独特の、真似の出来ないペースでまとめ上げられており、分断的なトラックの配置は典型的な物語性を拒否し、そのかわりに興味深い蜃気楼のような風景を浮かび上がらせる。さらに付け加えるなら、このアルバムにおいて調和性をもたらしているのはRuzzon個人のパーソナリティそのものだと言っても良い。ほぼ随所に散りばめられた彼のヴォイスは超現実主義的な言葉あそびの世界へと緩慢に誘うかのようであり(Il Capoline"において、彼は"What are you reading? The Wall Street Urinal?"と尋ねている)、ときには官能的なムードを滲ませる("Dead Drop"でのモノローグはRhythm & Sound "Smile"におけるSavageを連想させる)。もしくは、このアルバムにおける錯乱のピークは"Vox Your Nu Yr Resolution"での6分間をまるまる使い、すべてのマテリアルがギクシャクしながらループし、快楽的なマントラを作り上げる瞬間だろう。 快楽的とは言ってみたものの、Ruzzonが手掛ける音はどれも皮肉を含んでおり、率直さの欠片もないある種辛辣なユーモアそのものでもある。このアルバムの全11トラックを通して、Madteoは「挑戦的な音楽はセクシーにはなり得ない」という固定概念に鋭く刃を突き立てる。このレコードは不可解であると同時にスタイリッシュで、手のつけようも無いほど魅惑的だ。
  • Tracklist
      A1 Rut-A-Round A2 Dead Drop (When I Saw You That Nite) B1 Gory Glory B2 Bugged In Gaza B3 Vox Your Nu Yr Resolution C1 Rugrats Don’t Techno For An Answer C2 Il Capolinea D1 Tanti, Maledetti E Sempre D2 Vitruvian Nightmare D3 Ratskeller