Fiedel - Ferro

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  • Hardwaxの常連にしてBerghainのレジデントであるMichael Fiedlerはダンスミュージック業界に関わって15年以上にもなるが、私たちが彼の名を目にするときはたいていMMMレーベルのパートナーでもあるErik "Errorsmith" Wiegandとセットのようになっている。ここにきてどういう心境の変化があったかはわからないが、ともかく今回Fiedelは初のソロ作品を手掛けることとなった。この「Ferro」はいかにもMMMらしい自由なアレンジメントと蛍光色のサウンドを踏襲しているのだが、このレコードには微細な作業の積み重ねで時間をかけて完全体に持ってきたかのような手触りがある。 実を言えば、このFiedelのソロにおけるサウンドには、MMMでの作品では何故か聴かれることのなかった美しさがある。タイトル・カットでは片手で数えるほどの少ない音数のなか、ミュートされたドラムが軌道を描くように取り囲んでいる。こうして言葉で書いてしまうと、このアレンジメントはたとえば"Touch & Go"などのトラックと同質であるかのように思われてしまうが、実際に聴いてみると具合は異なり、予想を遥かに上回るほどそのサウンドは美しく精巧でドリーミーだ。フリップサイドの"Andreas"はそれに比べると少しだけハードな仕上がりだが、Fiedelがその蠢くグルーヴを実に巧妙にコントロールしていることがわかるだろう。結論としては、この「Ferro」はそのインパクトこそ控えめであるものの、Erik & Fiedelでのリリースに比べても劣らぬ苛烈さを秘めていると言えよう。
RA