Peaking Lights - Lucifer in Dub

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  • アメリカの夫婦デュオ、Peaking Lightsによる2012年作品『Lucifer』ほど誤解されやすいアルバムは少ないだろう。Aaron CoyesとIndra Dunisによって創られる音楽はダブ、インディー、エレクトロニカにゆるくフォーカスしたものであり、暗黒天使というよりは儚げな妖精と言った方がふさわしい。同時に、彼らのサウンドはひたすら軽くそして実体性が存在しない。それはBroadcastのインディー実験精神、Amon Duulのクラウトロック、King Tubbyのダブ、The Silver Applesの60年代サイケデリアを落とし込んだ2011年リリースの前作『936』と同質のものだ。リワークを詰め込んで再リリースされた『936』同様、この『Lucifer』もまたリミックスというトリートメントを施されることになった。『936』のリミックスではAdrian SherwoodやDam-Funkを招いていた彼らだが、今回は自らリメイクを手掛け、そこに意外な驚きこそないものの非常に調和のとれた作品に仕立てている。 1曲目の"Cosmic Dub"ではすぐにそれと分かるようなダブ的手法を敢えて避け、より大胆な再構築を試みている。"Cosmic Tides"でのダビーさは格別であり、ベースがぐっと存在感を増しリヴァーブのかかったIndraのヴォーカルは有り体に言ってしまえばScientistそのものと言ってもいいほどだ。しかし、このリミックス・アルバム『Lucifer in Dub』の大半はオリジナルたる『Lucifer』と鏡写しのように呼応する内容となっている。似てはいるが、その位置関係がまったく正反対になっている・・・とでも言えばいいだろうか。"Live Love"のライブ・ダブ・ヴァージョンではそのトロピカリア的ムードを覆い隠すようにベースがせり上がり、Dream Beat"の"My Heart Dubs 4 U"ヴァージョンではもはやベースがメロディすら奏でている。 ヴォーカルが楽曲構造の相関関係を緩めるかのように機能しているので、その音像はまるで黒く淀んだ水に引きずり込まれていくような感覚がある。"Midnight"のオリジナルには中東的なサイケ風味が感じられたものだが、そのダブ・ヴァージョン"Midnight Dub"ではギターはさらに歪み、そのダーティさはより脅威的だ。かならずしも同じサウンドではないにせよ、Gaslamp Killerをより禍々しく仕立てたかのような趣がある。非常にダーティでラフなサウンドであるが、この『Lucifer in Dub』はまさしくその名にふさわしく悪魔的な威厳を持ち合わせていると言えよう。