WOMB ADVENTURE’12

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    16 Jan 2013
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    Resident Advisor
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  • 年末のビッグフェスティバルとしてすっかり定着したWOMB ADVENTURE。言わずも知れた渋谷のヴェニュー WOMBがプロデュースするこのパーティーは、初開催の2008年から毎年趣向を凝らし充実度を増して展開され、今回のWOMB ADVENTURE’12(以下WA’12)でなんと開催5回目を迎えた。今回は大注目のRichie Hawtin率いるENTER.や、幕張メッセを知り尽くしたDarren Emerson、Nina KravizにDaddy Gなどバリエーションに富んだ近年類を見ない豪華なラインナップが一層の話題を呼んだ。特にその前評判と期待値は過去最高といっても過言ではなかった。わたしの周囲でも、パーティーに繰り出すたびに「今年はどうすんの?もちろん行くでしょ?WA’12!」と年末の大イベントの出欠確認が続き、中には早割チケットを8月に購入済で「もうこれ以上待てない!」と嘆く友人もいた。わたしはと言うと10月に念願のAmsterdam Dance Event(以下ADE)に初参戦してきたのだが、参加を決めた9月初旬ですでにENTER.のチケットはソールドアウトとなっており、悔しいながら泣く泣く参加を見送ったという苦い事情があった。そんな傷心の拠り所はWA’12にてENTER.が開催予定だという事実であり、ADEで見逃したぶん思う存分にENTER.を味わってやろうというリベンジの気持ちと、今年の豊富なラインナップ及び毎年一層レベルアップするパーティーの演出・運営に対する期待感を募らせ、当日を迎えた。 結論から言うと、最高に楽しかった!これに尽きる。レビューを執筆している今、あれから一週間が経ったがまだ興奮冷め止まぬほどだ。興奮しすぎて記憶が定かではない部分もあるが、以下にてWA’12の様子を少しでもリアルに伝えられればと思う。 19時半頃に自宅に友人が到着し、パーティーのプランを練る。いつもならついダラダラと出発が遅れるのに揃いも揃って浮き足立ち、予定通りの時間に自宅を出発した。東京駅の連絡通路、各駅停車の京葉線など往路の道のりにじらされ、もどかしい思いをしながらもなんとか海浜幕張駅に到着し、寒空の中黙々と足を進める。外に漏れる会場内のインスタレーションの青い光に導かれ会場入りすると、フロアから伝わる振動に今年はどんな冒険を体験できるのだろうと心が躍った。 WA’12は海外のビッグパーティーをフューチャーしたRICHIE HAWTIN presents ENTER. AREA、WOMBの厳選アーティストから成るWOMB WORLD WIDE AREA supported by MONSTERの二大フロアを軸に、日本のパーティーを支える若手アーティスト等によるRAFT TOKYO AREA supported by Jagermeister、ファッションブランドの視点にて音楽の新しい楽しみ方を提案するA|X ARMANI EXCHANGE AREAの全4フロアから成る。このような四層構造はWA’11から継承された要素だが、今回はその精度が一層増し洗練されたように思う。まず、WA’11ではメインの二大フロア以外は屋外にて展開されたが、今回は全フロア屋内会場での開催であった。WA’11ではいろんなフロアを見て回りたくても寒暖差が激しく思いっきり楽しめないもどかしさがあったが、今回は火照った身体を冷やしてしまうこともなくフロアからフロアへ快適に移動ができ、4フロアを存分に味わうことができた。また、十分な数が設置された屋外の簡易トイレとRICHIE HAWTIN presents ENTER. AREAの間にRAFT TOKYO AREA supported by JagermeisterやA|X ARMANI EXCHANGE AREAがあるため、屋内と屋外をつなぐ拠点として人々が自然と集う交流の場所となった。屋外はドリンクバーやテーブルと椅子、喫煙所などの憩いの場が横に広がり、PIONEER BOOTHが設置され最新のテクノロジーを体験できるなど、一貫して息抜きの場として見事に機能していた。WA’12から約1カ月前に同会場にて開催されたelectraglide 2012もラインナップや演出は申し分ない素晴らしさだったが、永遠に並ぶトイレやドリンク、数も少なく場所も悪い椅子の配置、移動しづらい動線など不満も多く、十分な配慮がされているとは言い難かった。その点、WA’12は最大限にパーティーを楽しめるよう、参加者の視点を取り入れた最大級の配慮がなされており、WOMBのパーティーピープルへの愛情を感じる作りだったと言えるだろう。 屋内会場の右側に位置するWOMB WORLD WIDE AREA supported by MONSTERでは、フロアの名の通りWOMBを拠点に世界を股にかけて活躍するAKiがスタートから23時まで重厚かつ軽快なドラムンベースを繰り広げ、2012年に本格始動し今後の活躍が期待されるAKi、YUUKi、STYによるベース・ミュージック・プロジェクトASYのパフォーマンスは30分という短い時間ながら個性ある3人の融合という可能性を見せつけた。全アーティストの中で唯一日付を跨いでプレイし続けたMark Eはしっかりと地に足の着いた低重心なハウスサウンドを奏で、Nina Kravizはいつもよりハードに攻め立てた音遊びで新たな一面を印象付けた。Daddy Gはそれまでのアップリフティングな空気を切り裂き、クリエイティブなサウンドでフロアを一瞬にして彼独自の世界観に染め上げた。3時半までのバラエティに富んだ内容から一転、大沢伸一による安定感あるエレクトロニック・パーティー・ミュージックが冒険終盤へ手堅く誘導し、幕張メッセ及びビッグイベントで数々の功績を残し日本のパーティーピープルを熟知したDarren Emersonが煌びやかかつハッピーなサウンドで最後まで盛り上げた。WOMB WORLD WIDE AREA supported by MONSTERは全フロアの中で特にヴィジュアルの演出に力が入っており、WHATifとDigital Slaves等による刺激的な視覚効果で人々を釘付けにし、フロアの熱狂に大いに貢献していた。また、AIBAのコントロールによる3台のマルチレーザーが織り成す光のアートは、フロア後方に点として反射し幻想的な演出を実現していた。打ちっぱなしコンクリートが印象的なWOMBと幕張メッセ会場内の雰囲気がオーバーラップして、まるで大きなWOMBにいるような錯覚さえ覚えたほど、ファンにはたまらないWOMB感満載のフロアだった。 屋内会場の左側には手前にA|X ARMANI EXCHANGE AREAがあり、フードコートやドリンクバー、テーブルと椅子などの憩いの場を挟んだ奥にあるJagermeisterのオレンジのテントにてRAFT TOKYO AREA supported by Jagermeisterが展開された。A|X ARMANI EXCHANGE AREAは大磯ロングビーチでのThe Hacienda Oiso Festivalや由比ヶ浜の海の家A|X Beach Loungeなど、特に2012年パーティーシーンへ注力し飛躍した印象が強いA|X ARMANI EXCHANGEによるフロアだ。前半1時まではMonkey In Charge、Kiraz、DJ Daiki、Groove Patrol等グローバルなバックグラウンドを持つアーティスト等によるボーダレスな音楽に終始楽しませていただいた。1時以降はどうしてもRICHIE HAWTIN presents ENTER. AREAでの滞在に偏りがちだったが、お馴染みDexpistolsのブレないパーティーサウンド、DJ Yummyの軸のしっかりした硬派なプレイには圧巻された。Richie Hawtinに骨の髄まで持っていかれている間、同時刻にプレイしていたRaha、DJ Punchはほとんど見逃してしまったのだが、長年の付き合いの”分かってらっしゃる”パーティー友達が「RAHAのプレイが一番良かった。みんなを超楽しませてたよ!」と絶賛していたのでお目にかかれなかったのが残念だ。 RAFT TOKYO AREA supported by Jagermeisterは2008年に発足したパーティーRAFT TOKYOによるフロアで、今後の日本のパーティーシーンを担う若手アーティストを中心に構成したラインナップが特徴だ。WOMB ADVENTURE同様に5年目を迎えるRAFT TOKYOは、型に囚われないパーティースタイルで各方面より話題を呼び、着実にファンを増やして成長してきた。今回のRAFT TOKYO AREA supported by Jagermeisterは、出演するアーティスト8組のうち半分の4組がライヴを行なうということでどのような試みが見られるのか大いに期待していた。RAFT TOKYOのレジデントを務めるTimoによる心地よくほぐれたサウンドで始まり、Yosa feat. Shu Okuyamaの二人がライヴで重ね合わせる新感覚でフレッシュなサウンドに魅了された。海外での活動も積極的に行い一層磨きがかかったDJ Pi-geにおいてはいい意味で肩の力が抜け、感覚の深い部分にスッと滑り込んでくる見事なプレイだった。札幌を拠点に世界でライヴ活動を展開するKuniyukiの深く包み込むハンモックのような音色に聴き入り、Stereocitiの繊細かつダークなサウンドにやられた。The People In Fog名義にてニューアルバムのリリースを控えるDJ Sodeyamaにおいては、Dragon Ash のドラムを担当するMakoto Sakuraiを迎え、アルバムリリース前初ライヴの披露となった。音楽に対して独自の思想を持ち常に探求心を忘れない、そんな向き合い方が音に出ていて好きだ。Moldはテクノロジーとグルーヴの戯れの楽しさをフロア全体に伝染させた彼ららしいライヴだった。RAFT TOKYO AREA supported by Jagermeisterはライヴ率の高さ故各アーティスト1時間で交代していたが、本フロア唯一の2時間セットとなるトリはKikiorix&Satoshi OtsukiによるBtoBで、土っぽくファンキーかつドライなパーティーサウンドが最後まで人々を沸かせた。前回はメインフロアのトップバッターを務めた彼らだが、WA’12ではトリとして申し分ない貫禄のプレイで締めた。RAFT TOKYO AREAの出演陣は多くが海外でのトラックのリリースやパフォーマンスを行い、活動の場を広げている。中心として今後のパーティーシーンをリードしていくであろう彼らの増々の活躍を期待したい。 さて、屋内会場の真ん中はRICHIE HAWTIN presents ENTER. AREAだ。フロア後方を覆う黒い壁の丸いENTER:入り口を潜り抜ける。ヴィジュアルはDJブース後方と両側の丸いスクリーンのみと控えめだが、聴覚で得る刺激が研ぎ澄まされ五感の扉を全開にするにはもってこいの演出だ。冒頭でも述べたようにわたしはADEでENTER.に参加できなかったが、ENTER.のチケットが他にも多数ある超豪華ラインナップのパーティーの中で一番に売り切れたからだ。2012年夏に始まったばかりのこのパーティーが如何にパーティーアニマルに求心力を放っているかが分かるだろう。そんな世界が熱狂するパーティーの世界公演7ヶ所の最終地が日本であることに興奮しない人がどこにいるというのか。もう一度言うが、わたしは今も興奮冷め止まぬ。 オープニングを飾ったのはベルリン在住日本人DJのHitoだ。Richie Hawtinからの絶対的信頼を受けるENTER.の陰の立役者として称えられる存在の彼女だが、それにも納得の硬派で渋いプレイを聴かせてくれた。2番手は今注目の若手アーティスト、Hectorが登場した。彼の多様なバックグラウンドからの影響が反映されたグルーヴに、独特の発想力で種々のアクセントが上手く融合され、是非今後もその動向を追いたいと思うプレイだった。続いて Minus の新鋭アーティストMatadorがライヴを披露した。Minusのアーティストらしく、セットを串刺す絶対的な統一感がありながら、多角的に攻めて人々をロックオンする展開の面白さは期待通りのクオリティだったと言えるだろう。日付を跨ぎ次は、お待ちかねのDubfireの登場に会場のボルテージも一気に上がった。そして、Dubfireの容赦ない音攻め・ビート攻めに人々がシンクロし、会場の揺れが一体化していった。これがENTER.かと圧倒させられた2時間だった。続いてプレイしたLoco Diceは、クリエイティビティ溢れる種々の要素をうまくレイヤー化してビートに乗せる相変わらずのテクニシャンぶりを発揮し、あの手この手で五感を刺激し思わず笑顔になる音楽でフロアをまとめあげた。残すは大トリRichie Hawtinのみ。前々回WA’10に出演した際に機材トラブルに見舞われ惜しい結果になった記憶が頭をよぎったが、その心配も冒頭の快調な滑り出しで一気に払拭された。個人的には久々にじっくりと聴くRichie Hawtinだったが、昨今見た中で最もハードで情熱的なプレイであった。彼の脳内から指先を通して具現化されるひとつひとつの音に歓喜し、享受し、会場全体がこの音楽への共感を分かち合ったのではないか。まるで、Richie Hawtinという祭司が指揮をとる神聖な祝祭の儀式かのように。 2012年はマヤ暦の第5の時代「太陽の時代」が終わるとされ、地球滅亡など終末論が騒がれた。ちょうどWA’12の翌日日本は政権交代し、都知事も変わった。世界的にもこの1年で次々と国のトップが交代し政治基盤が揺さぶられるなど大きな変化を迎えた。マヤ暦が唱えたある時代の終焉と重なるかのように、世界が節目を迎え新しいスタートを歩み始めた。WA’12も5年の節目を迎え洗練され、パーティーとして次段階へ一歩踏み出した。節目を迎え再スタートを切ったこの世界とWOMBが、これからどんな飛躍を見せてくれるのか。 人生はミニマルだ。同じことの繰り返しのよう。でも厳密には同じではない。少しずつ変化し、展開を繰り返し、流れを生み出している。ループとモアレは徐々に溝を深め、共鳴し、何でもないはずのアクセントが強大なエネルギーになる。やがて「愛」としてそれを享受し、誰かと共有する。次回WA’13においてもそんなダイナミズム溢れる冒険を体験したい。