Norman Nodge - Berghain 06

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  • この『Berghain 06』の冒頭を聴いていると、これが所謂テクノのミックスCDとは思えないかもしれない。しかし、20分も聴いていると、ここ数年でこれ以上テクノなミックスCDがあっただろうかと思わされるはずだ。このミックスを手掛けるNorman NodgeはBerghainでのレジデントDJを務めているが、普段はウォームアップの時間帯かパーティの最終盤にプレイすることが多い。このミックスの導入部はまさにそうした普段の彼のサウンドを反映しており、ゆっくりとギアを上げ、やがて134BPMまで駆け上りながらそのまま終盤まで突っ走る。 Nodgeはオールドスクールなジャーマン・テクノ狂といってもいい。ベルリンの壁が崩壊して数年後、彼はパーティをオーガナイズし彼が当時聴いていたまったく新しい音楽を熱心に広めた。この『Berghain 06』のトラックリストを見れば、Jeff Mills、Radioactive Man、Planetary Assault Systemsといった当時の彼の選曲を反映しているであろうセレクションが窺える。このミックスは、序盤と中盤以降でははっきりと分かれる。中盤以降は、Tim Taylor & DJ Slip "New York Minds"やChancellor "Roundabouts"、そしてDJ T-1000 "Metra"といったNodgeが愛してやまない90年代中盤から後半のクラシック・テクノが満載なのだ。 ギアを高くする前、序盤の展開ではBirds Two Cage、Oni Ayhun、MokiraのRedshapeリミックスなどを使ってじりじりと燃え広がるようなムードを紡いでいく。Patrick Gräser "From Foreign Territories"がミックスされるあたりでようやくエンジンが温まり、Nodgeはそのトラックは5分間にわたってプレイしながらリスナーにその後の展開を焦らすように期待させる。ひとたびエンジンが温まると、NodgeはいよいよBPMを上げはじめて1曲ごとにじわじわと全体の密度を高めていく。この中盤でのサウンドの展開は純テクノ的であると同時に、非常に楽しいものだ。Berghainテクノといえば、殺風景な洞窟の中で鳴っているモノトーンなサウンドと思われがちだが、Nodgeはそこにちょっとしたヒネりを加えている。Architectural "Looking Ahead"にしても冒頭こそ威勢が良いが、やがて後半になるとほとんどトランス的なメロディが顔を出したりもする。Crtls "Socket"のリズムに呼応するカウンターメロディは、ハードというよりもむしろ目眩がするような感覚というべきだろう。 Ostgut TonはBerghainのミックスシリーズにおいてMarcel DettmannやBen Klockといったビッグネームを起用する一方、こうしてBerghainにおけるサウンドの多様性を支える知られざる才能を紹介することも忘れていない。そういう意味では、すでに彼らはMarcel Fenglerの『Berghain 05』においてリスナーの予想を裏切る変化球を放ってみせた。このNodgeによるミックスで、Ostgut Tonは自らがあくまでも広大なテクノの連続体の一部であることを改めて証明している。それはこのミックスに収められた10年以上も前のトラック群がまるで先週リリースされたばかりのトラックであるかのようにフレッシュに響いていることからも分かるだろう。このミックス自体にしても、これから10年後に聴いたとしてもやはり今と同じように新鮮に響いてくれることだろう。