Christopher Rau - Two

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  • Christopher Rauが2010年にリリースした『Asper Clouds』はまぎれもない傑作だった。ごくクラシックなサウンドでありながら特異な個性を放つ彼は、『Asper Clouds』によって一躍ディープハウス界の代表格へと押し上げられたのだ。アルバムリリース以降はMule、Pampa、そして最も最近ではNever LearntからEP単位でのリリースを重ね、切り刻まれた繊細なパーカッション・パターンとタイトにプログラミングされたアナログ的技巧に彩られたその存在感は一際輝きを増している。そうした意味では、この待望の新作アルバム『Two』における前半の展開は、ここ最近の彼の作風をごく自然になぞっていると言えるだろう。 最近のEP群と同じ作風のトラックが並んでいるからといって、それは決して不満の対象ではない。だが、そうしたトラックをまとめて聴いていると総体としてある種の積算された定型が見えてくる。もちろん、1曲目の"Apple Snapple Tracking"での整然と回り続けるメロディにオフビート気味に音色を載せることでロボ・ファンク的なグルーヴが効果的に引き出されているし、"Swag Lue"でも同様の手法でドリーミーでサイケデリックなメロディ・モチーフにメカニカルなタッチが埋め込まれている。しかし、ダビーなエレクトロと化した"High"ではそうしたトリックはもはやすぐには判読不可能なものになっている。これまでのSmallvilleらしさは引き継ぎつつも、よりメカニカルなジャック・グルーヴへと向かっているのだ。 とはいえ、その中心はピンポンのようなパーカッションではない。というのも、アルバム後半ではグルーヴの動きがあるトラックは減り、よりディープで均整なグルーヴに向かっていくからだ。そうしたなかでも"Weird Alps"は屈指のハイライトと言え、Omar-Sをスッキリとさせたようなスタイルでひとつのエレメント(ここでは哀調を帯びたホーンのアルペジオ)が砂まじりで淀みのないディープハウス・ビーツと柔らかでミニマルなハイハットの上を自由に鳴らされている。こうしたシンプルさは今なお効果的と言うべきで、パーカッションにあふれた空間のなかにおいても事も無げに呻吟してみせる。これは"Girl"においても同様の事が言え、ザラついたクラップがVillalobosの"Fizheur Ziheuer"のようにディケイを開閉しながら鳴らされ、遠い空間のどこかからマジカルなメロディが浮かび上がってくる。"Sound Shake"でのスムースで霧の中を泳ぐようなディープさは、おそらく前作『Asper Clouds』でのセッションが原型になっていると思われる。 この『Two』に散りばめられたメロディやサンプルの質感からは、現実世界に近いものを感じさせる。堂々としたビーツや鋭いパーカッションにあっても、その隙間に漂う繊細なディティールはことごとく聴く者のマインドを捉え、空想のノスタルジアへと誘う。もちろん、このアルバムが近年リリースされたディープハウスのアルバムの中でも傑出した出来であることは間違いないが、他ならぬChristopher Rauのアルバムだけにより多くのものを期待してしまうのは贅沢だろうか。
  • Tracklist
      01. Apple Snapple Tracking 02. Swag Lude 03. Unlimited Dancemoves 04. High 05. Weird Alps 06. Girl 07. Sound Shake 08. Ciao