Locussolus - Berghain

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  • フリードリヒスハイン地区の端に忽然とそびえ立つBerghainほど長きにわたって影響力を保ち続けるクラブは、他に比類がない。Berghainはハウス、テクノ、ダブステップはもとよりセクシャリティ、ドア・ポリシー、クラブの音響などさまざまな面で既存のクラブシーンに大きなインパクトを与え、その絶大な影響量は今ではもう計り知れないほどのものになっていると言えるだろう。しかし、このクラブがもたらしたアンダーグラウンド・ダンスミュージックへの影響の大きさと同じくらいに、この暗く冷え冷えとしたクラブで過ごす夜(もっと正確に言えば、その週末のハイライト)が個人的体験として残る感覚はとにかく強烈だ。 そんな象徴的なクラブの名前をDJ Harveyがそっくりそのまま自身のLocussolus名義の新作のタイトルに冠したことに対してはなんとも混乱させられる。というのも、彼がBerghainに出演したのはごく最近になってからの話で、多くの人にとってはDJ HarveyとBerghainという2つの固有名詞はすぐには結びつきにくいものであるはずだ。そうは言っても、あらゆる世代のダンスミュージックを深く知り尽くしたHarveyという男がBerghainでのきわめて濃密なダンスミュージック体験をもとにトラックを作るのだから、たとえそれが直接的なものでなかっとしても、面白くないわけがない。いま我々のもとに届けられているのは、まさにそうしたサウンドなのだ。"Berghain"にはそのフロアーを直接連想させる強烈なキックや耳をつんざくような高域、性急なテンポこそないのだが、それでもこの曲から伝わるイメージはまさにBerghainでのフロアで感じるそれだ。アルペジオ・シンセ、クリスピーなシンバル、邪悪なムードを放つベース・スタブはひたすら下降する螺旋を描き出し、そこに終着点は決して見えない。正真正銘テクノでありながら、壊れたグラスや濃い煙草の煙の向こう側にはHarveyの圧倒的な存在感が歴然と存在している。 ざっくりと描きなぐったようなムードの"Berghain"に対し、Bサイドの"Telephone"ではおなじみのHarvey節が堪能できる。煌めくような女性ヴォーカルがきわめてモダンなディスコ・ビーツの上で跳ねている。なんの気負いもないキャッチーなトラックだが、それでもやはり耳をひくのはAサイドでの奇妙かつ示唆に富んだトラックのほうだと言えるだろう。