Bandshell - Dust March

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  • ある意味、Bandshellは典型的なHessle Audioのプロデューサーだといえるだろう。インターネット上にはほとんど顔を出さず、かといってダンスフロアーの現場主義に埋没するわけでもなく、あらゆるタイプのハイプに対してまったく興味を示さない(このあたりはElgatoやJoe、Objektとも共通している)。しかしその反面、ここ最近Hessle Audioに加わったアーティストのなかで最も精力的な活動を展開しているのもこのBandshellであり、Ben UFOをはじめとしたレーベル首脳陣のここ最近の趣向やセレクション—つまり、非ダンスフロアー的なエレクトロニック・ミュージックからの多大な影響—をBandshellはもっとも明確な形で表現している。 HardwaxではこれらのトラックをDJツールとして紹介していたが、もっと詳しく言えばこれらはよりパズル的なトラックだと言えるだろう。難解な構造、流動的なパーツ構成、とっつきにくいのに何故か非常に中毒性が高いといったあたりがパズル的たる所以だ。ダーティで泥にまみれたような質感でありながら、そのサウンドは本質的な楽しさを秘めている。Bandshellが創るサウンドはどこかモノトーンで揺らぎを秘めたものだ。 EP中でも"Rise 'Em"はその跳ねたシンコペーションで最もキャッチーなトラックに仕上がっている。それでもやはりトラックの展開は単純な抜き差しというよりは非常に液体的なもので、それと気付かないうちにトラックの色彩が次第に変化していく。"Dust March"でのローエンドはステッパーズ流儀のリズムに埋め込まれているが、その複雑なリズムは午前6時のフロアーで前後不覚にさせる類のものだ。"Dog Sweater"は無慈悲なまでにダークで、"Metzger"でのシンセパッドは非常に抑制されつつ、鋭いハイハットと分厚いベースがことさらに強調されている。中盤で滲み出るデジタル的な音色はおそらくElgatoの"Music (Body Mix)"からの引用に違いないが、それらは荒々しく加工されて興奮のグルーヴの中に埋め込まれている。とはいえ、Hessle Audioのことだ。決してその真相は明かされないだろう。
RA