Claro Intelecto - Reform Club

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  • 4年前にリリースされた『Metanarrative』以来となるひさびさのMark StewartことClaro Intelectoによるニューアルバム。最近ではModern Loveでの連作シリーズ「Warehouse Sessions」がよく知られているStewartだが、本来彼が好むのはテクノの柔らかく優しい面であったはずだ。しかし、1月にリリースされた「Second Blood」において示されていたように、このマンチェスター在住の男はDelsinへの移籍に伴ってそのアプローチをさらに研ぎすまされたものにしており、過去のClaro Intelectoの作品中最も感動的で洗練された作品に仕上がっていた。 今作『Reform Club』で展開されているのは、ごく飾り気のない美しい世界だ。引き延ばされたストリングスやパッドの音色はダブ的要素の濃い基盤の上で滑空や脈動、浮遊と揺らぎを展開する。そこに寄り添う優美なメロディはしかし、時折荒涼とした痛切さを醸し出したりもしている。"Still Here"では、朽ちて棄てられたマンションの片隅で忘れていたはずの玩具を見つけたような気分にさせられる。このトラックにおける埃っぽいピアノの音色や不揃いなタムは、ストリングスで埋め尽くされた中域とともに少しづつ変化していき、非常に上質な寂寥感となってピークを創り出していく。 アルバムに先駆けてリリースされた"Second Blood"もまた同様の内省的なトラックで、ゆっくりと回転するようなダブ・コードとどっしりとした重量感のあるローエンドが組み合わされている。他のプロデューサーであれば多幸感や歓喜を創り出すために用いる手法を使いながらも、寂寥感をピークとして創出してしまうこのようなトラックはいままで聴いたことが無い。ビートレスとなっている"Quiet Life"もまたこうした点で実にうまくやってのけているトラックであり、ぽろぽろとこぼれ落ちるピアノの音色と揺らぎ続ける分厚いパッドはアルバムの最後に柔らかく感動的な瞬間を用意している。 ここまで述べたトラックはすべて90bpm前後のものばかりだが、アルバム全体では120bpm前後のトラックが中心となって編まれている。アルバムの幕開けを飾る"Reformed"は力強いリズムセクションとあちこちに散らばるストリングスによって優美さを醸し出す。すべての構成要素が潜り込んでしまったかのような"It's Getting Late"でもグルーヴそのものは推進力に溢れており、時折挟み込まれるARPシンセの断片や鼻濁音のようなベースラインが際立っている。"Blind Side"や"Night of the Maniac"といったトラックはよりミステリアスな雰囲気にみちており、ダークなメロディの沼のなかにビーツが沈み込んでいくようでもある。 このアルバムには既存の定型をことごとく超越しながらも、驚くほど統一感のある作品に仕上がっている。それはひとえにStewartの卓越したサウンドデザインとコンポジションの賜物だろう。あらゆる音色の追加や変化においても、その展開はまったくこれ見よがしなところもなく、非常に理にかなった自然なものに聴こえる。コード進行もまた、過剰さを抑えた最小限かつ効果的なものになっている。同じくDelsinに所属するConforceのファンもこの細部まで行き届いたアプローチには息を吞むはずだ。その一貫性こそこのアルバムに豊かで知性に溢れるサウンドをもたらしているものであり、だからこそこの作品はリスナーの心と耳を掴んで離さないのだ。