Pearson Sound - Untitled

  • Published
    Mar 30, 2012
  • Label
    White label
    PEARS88
  • Released
    March 2012
  • Genre
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  • デジタル以外のフィジカル・リリースとしてはDavid Kennedyにとってやや久々の新作。彼の2012年最初のリリースは、不意打ち気味のゲリラ・スタイルで届けられた。新作としてはほぼ1年ぶりになるが、かといって2011年に彼がリリースしていた作品群とそう大きく変化しているというわけではなく、記憶力の良いリスナーであればこの"Untitled"もリリース以前から彼のセットでプレイされていたことを憶えているはず。 この"Untitled"はいわば現在進行形のPearson Soundスタイルの典型だ。ヴィンテージな質感を色濃く匂わせるドラムマシンのサウンド、小刻みに沸騰するようなリズムとサブ・ベースは自在に出たり入ったりを繰り返している。中盤になってボトムが抜かれる展開であっても、まったくそのグルーヴには澱みがなく、やがて印象的なオルガン・リフが入ってくるとその漆黒のグルーヴはにわかに色彩の気配を帯びはじめていく。オルガンの音色自体はさほど主張の強いものではないが、Kennedyはその下降していくような展開を波打つベースラインと巧みに調和させていて、このトラックは異例の力強さを獲得している。"wait for breakfast?"とつぶやく、奇妙で支離滅裂なヴォーカルのカットアップも相まって、Pearson Soundの過去作品中最もユニークなキラー・トラックに仕上がっている。 それに比べるとBサイドは印象の強さという点ではやや劣る。彼が昨年Night Slugsからリリースした"Working With"にそっくりなマーチング・バンド調のサウンドは、展開と呼べるべきものはほとんどなく、ただひたすらミニマルな上昇を見せつつも、クライマックスには決して到らない("Stifle"におけるあのマッシブなベースラインがすっぽり抜け落ちていたら、と想像すればわかりやすいだろうか)。このトラックはいわばPearson Sound流のツール・トラックとでも言うべきもので、おそらくこのレコード自体もツール的な性格が強いと言えるだろう。DJにとっては非常に使い甲斐のあるツール・トラックだ。
RA