eleven 2nd Anniversary Party with Sound of Berghain

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  • 東京西麻布で連日ハイクオリティなパーティーを開催し、名実共に日本のクラブの代表格となったelevenが、2012年2月に2周年を迎えアニバーサリーパーティーを2日に渡って開催した。1日目に行われたのは、現在のベルリンのクラブの最高峰、Berghainのレジデントを招致して開催される“Sound of Berghain”。elevenにて過去何回か行われている同イベントだが、今回はベルリンのレコードショップHardwaxの店員であり、Basic Channel系列のレーベルChain ReactionからScion、Substance名義でのリリースでも知られるベテランDJ Peteと、自らのレーベルSoloaction Recordsからの一連のリリースや、Delsin、Styrax、Ostgut-Tonといった錚々たるレーベルから作品を発表し、近年はEQDという別名義でも精力的に活動するShedが来日した。彼らに加え、Berghainでのプレイ経験もあり、地元千葉でのFuture Terrorを通じて00年代以降の日本のクラブシーンを牽引してきたDJ Nobuがメインフロアを担当した。一方上のラウンジは、東京を中心に活動し、elevenでも幾度となくプレイしている辣腕DJたちが勢揃いした。 先ずはラウンジにて、都内各所にて、大小問わず数多くのプレイをこなすSari BellのDJでパーティーがスタート。柔らかく緩やかなハウスセットで長い夜の始まりを飾った。メインフロアは23時にオープンし、DJ Peteがアブストラクトなエレクトロビートによる重低音を響かせていた。その後に、Timothy Reallyでの活動を経て、現在はPan Recordsを主催するSisiが登場、オーガニックでサイケな、独特のスタイルを徹底してキープ。続き、Naoki Serizawaが、氏がメインDJを務めるパーティーLilithを象徴するような、セクシーなディスコ/ハウスに軸足をおいたセットを披露した。 一方、Peteがメインフロアで鳴らす音は、時を経るにつれ徐々にハードな4つ打ちに切り替わっていき、集まる客も待ってましたとばかりに硬質な音色の渦に身を任せダンス。ダブステップ以降の流れを汲みつつも、テクノへの愛情を強く感じさせるそのサウンドは、ベルリンのダンスミュージックに長年深く関わってきた彼ならではのもの。フロアの動きを察知しつつも、自らのペースを崩す事なく完走した。 Photo credit: Ryu kasai PeteのDJが終了し、そのままシームレスにShedのライブが開始。MacBookとコントローラーに加え、JOMOXのリズムマシンを使用し、蠢くダークな低音と、鋭いハットによるビートに、時に淡く、時に激しく輝くシーケンスのコントラストが眩しいライブアクトを展開。シンプルかつ力強いループを淡々と重ねつつも、リズムマシンのパラメーターや、エフェクターを操り絶妙に音を変化させ、フロアをさらに深く陶酔させた。 その頃ラウンジでは、ロンドンでのHolicや、WOMBでのSurvival Danceで活躍するKikiorixが、ミニマルハウスを基調としたセットで祝杯を交わす人々を気持ち良く揺らしていた。続くDJはFasten Musique Concreteにて活躍するYoshitaca。クールなハウス、テクノを抜群のセンスで紡ぎ、ラウンジの締めを勤め上げた。 Shedのライブの熱気を引き継いだDJ Nobuは、硬質なテクノによるほとばしるエネルギーを開始からフロアに放っていた。氏が以前発言していた通りの、甘さ、優しさを見せない徹底したハードミニマル。途中、展開を挟めつつも3時間もの間、最高潮のエネルギーをひたすら持続させるそのスタイルは、現時点でのDJ Nobuの一つの完成形であったように思う。セットの最後で、張りつめた空気が溶け出すようにシンセパッドが響く様は、思わず美しいと感じたほどだ。翌日のために少々早めの終了となったものの、まだまだと願う多くのお客に対して、2度のアンコールに応えてくれたDJ Nobuとeleven。一瞬でフロアに熱を呼び戻す凄まじい音圧を鳴り響かせた。途中“Lovelee Dae”などで、彩りのある展開があったと思えば、それ以降はよりヒプノティックに突っ走る。音の迫力で飽和したかのようなフロアで、ダンスする人々とDJ Nobuの間に凄まじいエネルギーが流れているのを感じた。白熱した1時間半ほどのプレイは、最後のトラックのシーケンスがさりげなく途切れるとともに終了。渾身のDJであった事は、終了直後フロアに座り込むNobu氏の姿からも伺う事が出来た。 メインフロアの、ゲストのPeteがフロアを暖め、Shedのライブを挟んでDJ Nobuがラストまで担当するというタイムテーブルは、少し勿体ないように思っていたが、振り返ると各アクトの個性が上手く活き、フロアの熱量をラストまで保つ最良の選択であっただろう。思えばelevenという日本のクラブにとって、共に多くのパーティーを成功させてきたNobu氏ほどアニバーサリーの主役を張るにふさわしい人物は居ないはずだ。17日のメインのサウンドは、決して万人受けするものではないが、彼らは自分の信じる事をひたむきにやり続ける。それは、elevenとも共通する姿勢だ。2周年を祝うパーティーのメインにこのBerghainサウンドを選んだことに、elevenからのメッセージを感じてしまうのは深読みすぎるだろうか? Photo credit: Ryu Kasai ラウンジの幅広い音楽性に対応し、メインのハードかつディープなサウンドの魅力を過激なまでに引き出したPAと照明、加えてラウンジのVJ Hajime、シンプルで美しいデコレーションもこのパーティーの魅力を一層際立たせた。また混雑するエントランスやフロア、バースペースでの対応など、パーティーの隅々にスタッフの高い意識が行き渡っていたことも追記しておきたい。あの晩何度グラスの弾ける音が耳に飛び込んできたか… 開店から2年が経った現在も、elevenがより良いクラブを目指す試行錯誤は当然続いており、幾度となく通ううちにその変化を感じたという人も多いのではないだろうか。一方で、場所と主要なスタッフが同じであるためか、現在も何かとSpace Lab YELLOWと比べられる事も多く、elevenは未だ過去の前身を越えられていないという声も、正直よく耳にする。しかし、YELLOWという既に完成したクラブとは違い、elevenはまだ見ぬ素晴らしい遊び場を目指し、進化の道程を歩み始めたばかりである。17日の“Sound of Berghain”を含め今回のアニバーサリーは、来場した人々にelevenがこれまで培ってきたものを提示しつつ、これからをも期待させる事が出来るパーティーとなった。もちろん、elevenはその期待に応えるべく、この先も成長を続け、私たちに更なる刺激を与えてくれるだろう。 Photo credit: Ryu Kasai
RA