Art Department - Touch You Gently

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  • Art Departmentの最新アルバム『The Drawing Board』は全11トラックでスカスカの素朴なドラムパターンとシンセが薄いリヴァーブと共に鳴り響き、その上ではKenny Glasgowの不安定でオフチューン気味のヴォイスが散文詩的にその意味性を消失させるほどにリピートされるというものだった。そのサウンドは未来的であると同時にどこか懐かしい感触も携えていた。アルバムに収められた11トラックはどれもほぼ同じようなトーンにまとめられていたが、そのことでむしろアルバム全体の統一性をくっきりと浮き彫りにしていたし、独特の停滞感を強調するとともにアルバムのコンセプトが凝縮された形で表現されていたと言っていい。 アルバムリリースからほぼ1年経ってリリースされたこの新作シングルはしかし、アルバムとほぼ似たような表現に終始しているところにやや肩すかしの感を覚える。やはり何か新しい機軸を期待してしまうのは欲張りというものだろうか。"Touch You Gently"がスウィートで独特な、Art Department意外には成し得ないラヴァーズ・スロウ・ジャムのハウス解釈が活かされたトラックであるだけに私の意見には異論を唱える方も多いとは思うのだが、彼らとDeniz Kurtelとのコラボレーション・アルバムに期待が集まる昨今、新しいことにトライせずに既存の成功体験に頼ったものを作っているようではファンは興味を失ってしまうのではないだろうか。それでも一定数のファンは残るはずなので、それならそれで良いのかもしれないが。 対照的に、Brennan Greenが手掛けた"Tell Me Why"のリミックスは見事にフォーカスされた仕上がりで、ビッグルーム向けのパワフルなディスコ・ハウスに仕立ててみせている。オスティナートがテンションをキープし、サビ部分はドラマティックなピアノ・コードに押し上げられてキックやタムは小気味よくグルーヴを刻む。Aサイドのオリジナルに比べるとどこかラフな仕上げではあるものの、このEP中で一際光っているのは皮肉にもこのリミックス・ヴァージョンだ。