Delta Funktionen - Inertia // Resisting Routine

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  • ここ数年のテクノ・シーンを席巻しているトレンドは明らかに「Berghainサウンド」と呼ばれるものだが、その潮流も漸く変化の兆しを見せている。そのBerghainサウンドでさえ、そのミックスCDシリーズレジデントDJ陣を通して、よりメロディックで多様性を持ったサウンドへと変化しつつある現状を認識しておくべきだろう。オランダ発のレーベルであるDelsinと、さらにディープな志向を有するAnn Aimeeをはじめとした傘下レーベル群はストレートな4つ打ちとソフトなダブ・テクノの狭間であらゆる実験精神を発揮してきた。ここに届けられた『Inertia // Resisting Routine』はAnn Aimeeにとって初のミックスCDであり、テクノのなかに潜む多様性を果敢にあぶり出し、『Berghain 02』を端緒に発するいわゆるステレオタイプ的なダーク・テクノとは一線を画している。 そのミックスを「Resisting Routine」と銘打つことはやや自己美化にすぎるきらいもあるが、「Inertia」というタイトルに関してはまさに言い得て妙だ。Delta Funktionenが手掛けたミックスは主にダイナミックなブレクビーツと泥水を漕ぐようなシンセが中心になっているが、その安定感には眼を見張るべきものがある。Mike Dehnertによる痛烈な"Pneumatic"やLucy"Wytonia"あたりはミックスがにわかに生々しさを帯びる瞬間を演出しているが、この「Inertia」は終始「濃密な静寂」とでも言うべきムードを一貫してキープする。的を得た選曲(すべてAnn Aimeeのバックカタログから選ばれたエクスクルーシブなもの)と、細部にまで注意が行き渡ったミックスが不可分にバランスし、なかでもSkudgeによるハウシーな"Pollution"とRoman Lindauの荒々しい"Borne"がきわどくミックスされるところは屈指の興奮を誘う。 「Inertia」を主に支配しているのはモノクロームな質感ではあるとはいえ、その色彩と個性は目まぐるしい変化を見せる。ねじ曲がったブレイクビーツや全体を覆うささくれ立った質感はDelta Funktionenの手にかかると途端に印象を強める。彼の非常に説得力のある選曲は、ここ数年における彼に対する評価—つまり「テクノを再生させる男」—を確かに反映していると言えるだろう。なにより、この『Inertia // Resisting Routine』は進境著しい彼のDJとしての評判を確かなものにしていると言える。 エクスクルーシブなトラックを確かな正当性を備えて織り込むことは簡単な作業ではないが、この『Inertia // Resisting Routine』で注目すべきはそのトラックリストより、それらがどうミックスされているかという点にあり、テクノの近未来を示す道筋がその内部に潜んでいると言っても過言ではない。すべてのトラックがダイナマイト級であるが、なかでもCosmin TRGやMarcelusといった若手によって提供されたトラックはこのミックス中でも最良の瞬間を用意している。ダンスフロアの繊細さとホームリスニングに耐えうる高い音楽性を両立し、メロディと躍動感をほぼ完璧なバランスで融合させた冒険的なテクノの決定盤だ。
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