FaltyDL - Atlantis EP

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  • 整然と並んだハイハットに後押しされ、118BPMのテンポをクールにキープする"Atlantis"はDrew LustmanことFalty DLがここ最近手掛けたトラックの中でもそのリズムという点で最もストレートなトラックといえるはずだ。個人的にはPepe BradockやIsoleeのリズムを連想させる。しかし、同時にWarpの1994年ごろのリリースを連想させるようなメランコリックなシンセ・リードもあり、抑制されたブレイクビーツもトラックのそこら中でちらほらと顔を覗かせている。こうしたムーディなディープハウス的曲調に反し、トラックそのものの構造はあえてリニアにはしていないところがあり、メインとなる4小節のコード進行と別の明るいコードの組み合わせの間を断続的に行き来している。 いっぽう、"Can't Stop the Prophet"は「ストレート」とは対極にあるようなトラックだ。ストリングスやベルのランダムなカットアップから始まるこのトラックはRZAが手掛けたGhost Dogのサントラのような残像を残しつつ、不揃いなMPCのビートはやがてドラムンベースに展開する。このトラックにおける本当の驚きは冒頭で表れるスクリューされたヴォーカルのサンプリング・ソースなのだが、ここではその詳細は伏せておこう。ここで種明かししてしまうと、聴いてみたときの印象が薄くなってしまうから。 6/4拍子にくたびれたサンプルが絡む"My Light, My Love"はこのEP中でももっとも風変わりなトラックといえるだろう。ここでも、そのサウンドの色調や構造はPepe Bradockのそれを思わせ、そこに潜む優雅さもPepe Bradockを彷彿とさせる。目まぐるしい展開のトラックだが、決して不格好ではない。様々なスタイルの冒険を経て、最後のトラック"The Sale Ends"になってようやく彼は本来のUKガラージ・スタイルに戻ってくる。昨年リリースされ、タフでシャープなムードに統一されていた「Phreqaflex EP」に比べると、今回のEPはよりスムーズでシャッフル感が強くなっているといえるだろう。ここに収録されたトラックのほとんど全てで聴かれる、ふんわりとしたハイハットの使い方はその好例だ。
RA