ベルリンのPanorama BarやロンドンのfabricでレジデントDJを務め、2011年には名門レーベルPerlonから自身の名を冠したアルバムをリリースした女性ミニマルアーティストMargaret Dygas。ヴァイナルピュアリストで、独特の選曲スタイルと高いミキシングスキルを持ち合わせ、今年のRA Pollにもランクインを果たしたMargaretはこれまでにも度々来日してきたが、レーベルメイトであり、かねてより交流の深いFumiya TanakaのレジデントパーティーChaosへのゲスト出演は今回が初めてとなる。
出演が決まっているのは、12月22日(土)西麻布elevenでのChaos、そして24日(月)大阪Circusで行われるMini Chaosの2公演。RAはこの度の彼女の来日に先駆けて、インタビューを行った。
この度5度目の来日となるわけですが、今回は、あなたのレーベルメイトらもこれまでに数多く招聘されているFumiya Tanaka主宰のChaosへのゲスト出演ですね。特別な思いや、楽しみにしていることはありますか?
FumiyaのことはDJとしても人間としても大好きだから、今回招待してもらってすごく嬉しいし、感謝しているわ。彼のヴァイブスが好きだし、一緒にいて心地よく感じるのよ。
それから今回は、これまでの来日に比べて滞在期間が長いの。だからギグ以外に自由な時間があって、いろいろプランを立ててるわよ。日本の文化とアートにとても興味があるから、国立の美術館には絶対に行くわ。それから、品川の東照寺と、東京大学の校舎で開催されている座禅のクラスにも行きたいと思ってるの。特定の宗教に属してるわけじゃないんだけど、仏教とか禅っていうものの考え方にすごく関心があって、もっとよく知りたいと思っているのよ。すべての人やもの、自然などは、もともと同じ原子から造られていて、一つであるっていう考え方よね。わたしがやっている音楽も同じことで、その瞬間や空間だったり、スピリットをみんなで共有するっていうことでしょ。こういう考え方や気づきはもちろん、自分の音楽にも影響を与えているわ。
レコード屋にも行きたいわね。それはベルリンのほうがレコード自体の数も多いし安いけど、日本ではベルリンとはまた違ったレコードが見つけられるわ。それからもちろん、日本の友達にも会う予定だし、毎回行っているキディランドにも行くわよ!(笑)
あなたはヴァイナルをメインにプレイするスタイルですが、今後もそのスタイルは変わらないと思いますか?
この間Theo Parrishがあるインタビューで話しているのを聞いたんだけど、人々は音楽をコンピュータで聴くようになって、大切なものを失っているって。わたしもそう思うの。曲をダウンロードするのは便利だしわたしも時々はするけど、誰でも同じ曲をすぐ手に入れられるし、その作業は簡単すぎるから、あまり感情が伴わないわよね。なんて言うか、自分の足で歩くかわりに馬に乗ってラクしてさっさと行っちゃうって感じかしら(笑)。でもレコード屋に出かけて行って、一生懸命好きな曲を探して、2時間かけてやっと一枚のお気に入りのレコードに出会うことってあるでしょ。そのレコードは、一生大事にすると思うの。
海外ギグも多いから毎回レコードを持って行くのは大変だけど、CDだけでプレイするっていうのはわたしのスタイルじゃないし、なんだかお客さんを騙してるような気がしちゃうわね。たとえば最低10枚でも、好きなレコードを持って行くべきだと思うの。もし自分がヴァイナルで曲をリリースしているんだったら尚更、ヴァイナルをサポートしなきゃと思うわ。わたしにとってはレコードでプレイするのが普通で、コンピュータのほうが普通じゃないのよ。単純に、それでは心地良くないの。
そうそうちなみに、わたしはロスト・バゲージを避けるために、レコードはいつも、半分はスーツケースに入れて、あとの半分は自分で機内持ち込みにして運んでるわ。だって万一レコードバッグを盗まれでもしたら、ショックすぎて絶対に立ち直れないもの!だから個人的に、DJは海外ギグをする時、レコードバッグは預け入れないほうがいいと思ってるわ。
レコードはどこで買っていますか?
近所に、よく行くレコード屋が5軒以上あるわ。テクノだけじゃなくて、ジャズとかヒップホップを主に扱ってる店にも行くわ。クラブではあまりかけないけど。それから、中でもHard WaxとRotationはお気に入りで、よく行くわね。オーナーも素晴らしい人たちで、それこそベルリンに引越して来る前からずっと、とてもいい友達よ。Hard Waxでは、あまりクラブではかけないようなエクスペリメンタルな曲とか、ダブステップもよく買うわね。この間は、60年代にリリースされた、聞いたこともないアーティストの風変わりなアルバムを買ったわ、ジャケットも素敵なの。それから、Millions of Momentsっていうダブのレーベルは注目してる。echocordも大好きね。
でもレコードを買うときは、特定のレーベルとかアーティストで探すわけじゃなくて、今でも、ただレコード屋に出かけて行って、知らない曲をランダムにたくさんピックアップしたり、アルファベット順に全部見ていったりっていう買い方もするわよ。
音楽以外で最近気になっているもの、感動したことなどはありますか?
(レコード屋の)Rotationは、洋服とか雑貨もすごく可愛いからよく見るんだけど、Rockwellとか、Lazy Oafっていうデザイナーのものがお気に入りよ。この間は、ヒョウがプリントされてるファニーで可愛いTシャツを買ったわ。今回の来日でも、洋服を買いたいな。
昨日、 "sounds and silence"っていう映画のDVDを観て、ものすごく感動して泣いたのよ。そうそう、Fumiyaへのお土産にもこのDVDを買って行こうと思ってるの。英語とドイツ語しかないんだけど、全部を理解する必要はなくて、ただ観れば分かるから。本当におすすめよ。映画全体に、音楽へのパッションが溢れているの。人々が楽器を演奏しているんだけど、彼らの表情が素晴らしくて、本当に音楽を愛しているのが伝わってくるのよ。たとえばブラジル人の男性が、名前の分からない昔の楽器を演奏しているんだけど、それがとても美しくて、感動的なの。音楽を専門的に学んで、本当に良い音楽を創っている人たちは、それこそ人生を音楽に、自分が演奏する楽器に捧げているのよね。
そうそう、わたしも電子ピアノとアコースティックギターを持っていて、わたしなりのやり方で弾いたりするわよ。正式にコードを習ったりはしてないけど、ただ音が好きなの。それから自分で弾こうとは思わないけど、ヴァイオリンの音も好きよ。
来年の活動予定について聞かせて下さい。
来年は、ギグを少し減らしてスタジオでの制作の時間をもっと作ろうと思ってるの。まだオフィシャルじゃないから詳しくは話せないけど、今取りかかっているプロジェクトを、来年の第一四半期中くらいには発表できるんじゃないかな?