15年以上に渡り、にせんねんもんだいは音数を削り落としながら、自分たちの音楽を最低限の構成要素にまで容赦なく絞り込み続けてきた。1999年、当時大学生だった高田正子（ギター）、在川百合（ベース）、姫野さやか（ドラム）の3人が、その頃世間を騒がしていた「2000年問題」から名前を拝借して結成したこのバンドは、すぐに東京のライブハウスを中心に活動していたポストパンク・ノイズロックバンドたちの中にすんなりと溶け込んでいった。しかし、かつて自分たちのサウンドに最も近かったSonic YouthやThis Heat、Pop Groupなどを初期楽曲名に用いるなど、鼻っ柱の強さが売りだったこのトリオバンドは、今や完全に違うバンドへと変化を遂げている。

旋回するような反復グルーヴを打ち出した2008年のアルバム『Destination Tokyo』は、ギターを擁するバンドとは思えない一枚岩のような屈強なサウンドを誇る2013年リリースのアルバム『N』への布石に過ぎなかった。その『N』に収録されている ”A-1” 、“B-1” 、“B-2” の音数はかなり削り落とされており、単音を刻むベース、無慈悲に4/4のリズムを刻むキックとハイハットに時折挟み込まれるスネア、そして細かく動くメタリックなループとインダストリアルノイズの破片のようなギターが織りなすそのサウンドは、むしろミニマルテクノに近い。また、畏敬の念さえ起こさせるスタミナと集中力によって繰り出されるライブはマシンだけが実現可能な領域にまで踏み込もうとしており、アルバムよりも更に大きなインパクトを生み出している。

その彼女たちは、最新アルバム『N’』で前作『N』のグルーヴに再度取り組み、推進力とタイトさを更に押し進めることで、その反復性を更に強調している。このアルバムには彼女たちの長年のファンであるShackletonのリミックスが2曲収録されているが、先日、東京都内の小箱のひとつで、最近はにせんねんもんだいのレコーディングスタジオとしても使用されている落合Soupで両者の初共演が実現した。このインタビューはそのライブの数日後に行われたものだが、緊張感溢れていたライブ当日とは一転してリラックスしたムードとなり、彼女たちのサウンドの変遷などが笑いも挟みながら語られることになった。

今回のヨーロッパ・ツアーはいかがでしたか？　前のツアーと比べて何か変化はありましたか？

姫野さやか：今回は凄いいい感じで回れたというか、状況は以前よりも良かったですね。お客さんが沢山来てくれるライブが多かったので。

フェスにもいくつか出演しました。

姫野：フェスには結構出演しましたね。あとは「にせんねん」がメインのイベントも、今までは人が来る時もあれば来ない時もあって、場所によってその変動が大きかったんですけど、今回は割と安定していて、どこでプレイしても沢山の人たちが見に来てくれていたのが凄く有り難かったです。

3月の落合SoupでのShackletonとのセッションには驚きました。共演はいつ決まったのでしょう？

高田正子：去年彼にリミックスをしてもらった時ですね。

姫野：11月ぐらいには（共演の）話が出てました。

Shackletonがリミックスを担当したきっかけは？

姫野：ヨーロッパ・ツアーで回ったフランスのフェスなどで数回会う機会がありまして。Shackletonが「にせんねん」のことを凄く気に入ってくれていたということで、その場で話すことはあったんですが、連絡先を知らなかったので、連絡は取っていなかったんです。それで、『N’』のレコーディングをしてる時にたまたまSam（Shackleton）から「一緒にコラボしてみたい」みたいなメールが来まして。凄く良いタイミングだなと思ったので、「ところで、リミックス興味ある？」とこっちから逆に訊いたら、たまたま向こうもタイミングが良かったみたいで、すぐにやってくれました。そのあとで、「日本に来る予定ある？」と訊いたら、それもまたタイミングが良くて、「3月に行くよ」と。それで色々決めていきました。

あの日のセッションは凄く興味深い内容でした。にせんねんもんだいのサウンドは段階的にミニマル化が進んでいて、今は昔に比べてすべての音を自分たちでコントロールしやすくなっているというか、不要な部分をすべて破棄したような印象なのですが、その切り詰めた自分たちの世界に他人が加わるというのは実際どうでしたか？

在川百合：あのようなリアルタイムでの共演は、集中力が更に求められますね。

高田：ずっと同じ曲をやってるので、ああいう共演は新しいインプットが出来る感覚です。新鮮な気持ちになれると言うか。「あっ、こういう感じでもいいのか」みたいな感じがあって良かったです。

私が聴いた限り、高田さんのサウンドにShackletonが重ねているような印象でした。

高田：そうですね。私のギターの音を彼がサンプリングして、そこにモジュレーションを加えて戻していたみたいです。

通常のライブと違い、自分が使用する周波数帯を他人も使用するという状況に驚きはなかったですか？

高田：ありました。でも、自分の演奏に勢いみたいなものが加わるので、良い面もあったと思います。いつもはひとりなので、「わあっ！」って（笑）。ちょっと楽しかったです。

最新アルバムのタイトルはどう読めば良いのか教えてもらえれば。

姫野：『エヌ・ダッシュ』。

在川：海外だと、これはアポストロフィって言うんですよね。

姫野：だから、私たちが間違えちゃった！（一同笑）

在川：（「−」を手で真似しながら）「ダッシュはこっち！」って。

姫野：ツアー中にそれに気づいて「ああ、もう遅いな」と。直せなかったです。

実は初めてタイトルを見た時に「これは何だ？」と少し驚いたんです。ですが、サウンド自体にも驚かされました。というのは、今までやってこなかったことをこのアルバムではやっていますよね。『N』のバリエーションというか、リミックス、またはバージョンなのか…　どう表現したら良いのか分からないのですが、このアルバムでは何を目指してたんでしょうか？

姫野：私たちの曲って、他の人にとっては一緒に聴こえているかもしれないですが、自分たちの中ではどんどん変わっていて。もう2年、3年ぐらい同じ曲を演奏していますが、最初に出来た頃と今とでは結構違うんです。特にギターのループの感じとか、ギターが大分変わってきていて、私たちとしては昔よりも今のバージョンの方が良いと思っているんです。それで、今までの経験を活かして、より良いレコーディング方法を自分たちで探して、今の私たちの音を録ろうと。ミックスもレコーディングも、今まで以上に時間をかけました。

『N』と比べても？

姫野：もう、全然。

在川：4ヶ月とか。

姫野：夏のツアーが終わってから、去年ずっとやっていて。良い音でレコードを作るというのが私たちの目標のひとつだったんで、それが今回出来たので満足しています。

レコーディングは前作『N』と同様、パート別に録音したのでしょうか？

姫野：前もパート別で録ったんですが、今回はさらに、私のドラムの場合は、キックはキックだけ、スネアはスネアだけ、ハットはハットだけっていう。

Dave Grohl（Foo Fighters）のように。

姫野：もう、本当に全部を分けて。今までより細分化して録りました。

Shackletonは以前からあなたたちのライブのファンだった訳ですが、彼と話をした時に、アルバムのサウンドについて、『FAN』（2009年）まではロック的な印象が強かったが、『N』でようやく自分が好きなサウンドになったと言っていました。あなたたち自身もそういう感触はありましたか？

高田：『N』の時から、レコーディングのやり方、録ってもらう人、ミックスしてもらう人、方法、場所とかにこだわり始めて、もっと自分たちのイメージと合った音源にできるような形でやり始めたんです。そうしてできた最初のアルバムが『N』なので、それまでとはちょっと違います。試行錯誤の段階だったので、その方法が正しいのかどうかは分かりませんでしたが、とりあえず自分たちが良いと思う方向に進んでみようと思って。

在川：色々と試せることが増えたんです。前まではレコーディングスタジオにあるものを使って、そこで出来る範囲内でレコーディングしていたんですが、レコーディングしてくれる人と私たちが同じ立場になって、「こうやってみたらどうだろう？」、「ああやってみたらどうだろう？」と、いちいち細かく試しながら作ったのが『N』です。

今作のレコーディングは落合Soupで行いましたが、定期的にライブをやっている慣れた場所でのレコーディングということで、普通のスタジオでのレコーディングと比べるとリラックスして臨めたのではないでしょうか？

在川：リラックスは出来ていたと思います。自分たちがやりやすい空間を作って、何日もかけて録ったので、だんだんその場に馴染んでいくというか、徐々に勝手が分かってくる感じはありましたね。

###

Soupは普通のライブハウスとは音がかなり違います。音に囲まれているような印象が強いですよね。実際にプレイしている側もそういう印象でしょうか？

姫野：例えばNest（渋谷）のような普通のライブハウスだと、私たちが聴ける音ってスピーカーの後ろ側の、ちょっと「ブアーン」とした音やモニターの音だけなので、ステージ上は結構寂しい音で聴こえているんです。

在川：フロア側の音は信じてやるしかないです。

姫野：そう。だけど、Soupだとお客さんが聞いているスピーカーの音を私たちも聴けるし。あと、私の場合は、（他の2人の）アンプの音が直接聴けるので、色んな意味でより近い感じがします。

在川：一体感みたいな。

『N’』を聴いている時に思ったのですが、今までのアルバムと比べて、「これはギターだ！」というあからさまな音が一度も出てこないなと。

高田：本当ですか（笑）？

ええ。例えば『N』の収録曲の“A-1”ではちゃんとしたコードが聴こえますが、今作ではそういう音が一度も出てこないなと思いました。

高田：そうかも。忘れてた。そういうのやめたんです。『N’』の制作を始めた頃から、どんどん排除して、もっとミニマルにしていくというか、もっとミニマル感を活かせる音を使うというか、そういう方向にどんどん変わっていったと思います、私の中で、「ジャーン！」みたいな音がちょっと違うなと感じ始めて。もっとノイズっぽい音で、より緊張感を出せたらいいなと思って。

高田さんはどのように新しい音を作り出しているのでしょう？　個人練習で生まれたアイディアをリハーサルで試しているのでしょうか？　それともメンバーとのセッションを通じて作り込んでいくのでしょうか？

高田：同時進行です。一緒にスタジオで練習している時に、即興でやりながら、「こういう感じが合うのか」とか。大体できたなと感じたら、それを練習しながらどんどん良い感じに詰めていきます。

2011年のライブアルバムには、定番の“いっきょくめ”や“Mirrorball”が収録されていましたが、このリリース後にこういう曲を意識的に捨てて、バンドとして違うことをやろうと決めたのでしょうか？

在川：そうですね。それまで演奏していた曲も、あれはあれで何年間もずっと演奏し続けて進化してきた曲なんで、その時の状態をライブでレコーディングしようと。それで次のステージへ進もうと決めたんです。今はもう先に進んでしまったので、前の曲は演奏できないですね。

今の自分たちの音楽のインスピレーションになったものはありましたか？

高田：2012年に入る前ぐらいから、ネットのストリーミングとかでDJのミックスとかを聴き始めました。いわゆるダンスミュージックとか。

それまでは聴いていなかった？

高田：私はそんなに聴いていなかったですね。もっと違う感じの音楽を聴いてました。いわゆるダンスミュージックというのを聴き始めて…これがひとつのインスピレーションだったと思います。あとは、曲を作る時にロックっぽい感じがあまり好きじゃなかった。ちょっとメロディー見せちゃうみたいな、そういうのはどうなんだろう？　と思ってて。でも、ループに合わせて演奏するというのは面白いなと思ってて、それとダンスミュージックが…ちょうどこう、頭の中で重なっていったというか。自分の考え方やバンドでの立ち位置が変わっていったというか。

在川：リズム隊は基本的にそんなに大きな変化があった訳ではない気がするな…。でも前よりごまかしが効かなくなった。ロックっぽい要素があった頃はちょっとごまかしが効いてた気がする。リズムが多少ずれても、多少走っても、音の雰囲気がロックの感じだった。ライブではそういう勢いで押し切ってしまうみたいなところがあったけど、ミニマルになればなるほど、ループも繊細になっていって、上音も「ジャーン」じゃなくなってくると、どんどんごまかしが効かなくなってくる。リズムを押し出していくなら、一音も外さずにやらないと、やりたいことがぜんぜん伝わらなくなっちゃう。

私は2000年半ば頃からたびたびあなたたちのライブを見ていますが、その頃は時々リズムずれることがありましたし、テクニック的には今やっている音楽を当時は演奏できなかったのではないかと思います。いつ頃から今のような演奏が「できる！」と感じるようになりましたか？

在川：私はもう、本当に最近です。今のこういう感じになり始めた最初の頃のライブなんて、もう聴けたもんじゃないです。びっくりする。「ひどい、ひどい…」って。お客さんたちに、「なんだ、こいつら」って思われているんじゃないかって、みんなで心配していました。

姫野：本当に演奏が大変で。ループに合わせるというのは本当に難しいんです。特に「カタカタカタカタ」みたいな音に合わせるのは。ライブだとモニターの調整や状態、それに場所によっても、聴こえてくる音が変わるし、難しいです。今もそう思いながら演奏しています。

先日のSoupのライブではメトロノームを使っていました。

姫野：メトロノームはいつも見ています。何回もずれちゃうことがあって。私が聴いている音が違う音だったりとかして、そっちに合わせて速くなったりすることが最初の頃は結構あったので、そういうのが絶対ないようにメトロノームを目安にして、いつも確認しています。

最近はヘッドフォンのクリックトラックに合わせて演奏するドラマーが多いですが、同じ方法でやろうとは考えませんでしたか？

姫野：そもそも、クリックに合うようなループじゃないので。ループ自体が微妙に正確じゃないんです。合わせ方によって、どうとも捉えられるループというか。そこでまず、どこから始めるかを決めるのが私です。最初に入るのは難しいですね（笑）。

在川：打ち込み的なループじゃない時もあるので。そこには人力で対応するしかないというか。人力でしか出来ないループがあるんです。

先日のSoupでも最初の曲はベースから入りましたが、タイミングはどうやって合わせたのでしょう？

在川：私もずっとメトロノームを使っています。メトロノームのテンポをループと大体同じテンポに合わせておきます。そこにループが入ってくると、そこからはループのテンポに合わせていく。頭の中を切り替えてます。

難しい質問かもしれませんが、ライブをやっている時はどんな状態になるのでしょう？　同じ作業を繰り返していると、無心になるというか、不思議な気持ちになるのではと思ったのですが、いかがですか？

姫野：なるべく、音だけに集中するようにしています。余計なことを考えると、ちょっとずれていっちゃうので。毎回必死です。

在川：私も同じです。一旦メトロノームから目を逸らして、テンポをずらしてしまうのが怖いので、「メトロノームのことだけを考える」という催眠状態でやります。でも、曲がだんだん長くなってきて、ループに従っていない時とか、ギターの音が入ってくる時は、何に合わせていこうとか、「次何しよう？」とか雑念が多少入ってくる。

高田：凄く良い状態の時、音が良く聴こえる時はたぶん無心。何も考えてなくて、凄く楽しいというか、気持ちいいというか。だけど、そうじゃない時は必死です。「ここに立ってるのも辛い」とさえ思います。

今でもそういう時はありますか。

高田：ありますね。よくあるんです。難しい。

あなたたちは海外のメディアでよく「一般的な編成でテクノを演奏するバンド」と紹介されていますが、それについてはどう思いますか？

高田：テクノを演奏するバンドだという評価についてですか？　（しばらく考えて）ある意味あってるなとは思います。そうカテゴライズされることについて反論する気はありませんが、そこに留まりたくはないという気持ちもあります。

在川：捉え方が人それぞれなので、違和感は特に感じないですし、「テクノはちょっと違うな」とも思わない。そもそも、テクノの定義に乗っ取って、何かをやろうとしているわけではないので。

高田：（インタビュアーに向かって）どう思いますか？

Nesennenmondai

私もそう思ったことはあります。アルバムを聴く限りではUKのFactory Floorなどに似ていると思いますが、Factory Floorのライブはシーケンサーなどを使ってるという点であなたたちとは違います。あなたたちはずっと人力で演奏しています。そこが大きな違いですよね。

在川：どこまでも人力でやってる。

高田：そこが一番面白いところ。

例えば、今やっている曲を全部シーケンサーでやると、面白さがなくなると思いますか？

姫野：うん、面白くないと思います、多分。

先ほど、ダンスミュージックを聴くようになったと言ってましたが、特に好きなジャンルやDJ、アーティストはいますか？

高田：姫野さんに教えてもらったJames Murphyとかのミックスを結構聴いていましたね…。そのくらいですかね。あとは適当に聴いていました。

姫野：Factory FloorのメンバーのDJミックスなどを聴いて、そこから面白い曲とかをピックアップして、更に聴く範囲を広げていく感じでした。

James Murphyで思い出したのですが、 “Appointment”は非常にDFAのサウンドに近い曲だと思いました。この曲の制作はDFA系を聴き始める前でしたか？　それとも後でしたか？

高田：多分聴く前に作ったと思います。2008年か2009年くらいですね。先に他の2人がリズムを組んでいたんですが、私のパートに関しては、凄くインスパイアされた曲があったんです。何だったかな？　『ビバリーヒルズ・コップ』（映画）のあの曲。

“Axel F”ですかね？

高田：”Axel F”、そうそうそう！　あのイメージ。あれ格好いいですよね。ああいうイメージ。最初ギターで弾いたんですけど、なんか違うなと思って、キーボードで弾きました。

最近の曲で、他のアーティストにインスピレーション受けて作った曲はありますか？

高田：スタジオで音を出した時に「いいな」と思った部分を詰めていくという形は基本的には変わってない。でも、方法論で言えば、例えばミニマルっぽくまとめようとか、ノイズだけにしようとかは、ダンスミュージックの音のまとめ方が大きなヒントになりました。要所要所で、「あっ、これでいいんだ」、「ここまででいいかな」という判断基準として、真似ている部分は個人的には沢山ありますね。最近インスパイアされたのはParasenseとか。彼らの凄く変な音とかですね。

Parasenseはあなたたちの最近のRBMAのミックスにも入っていました。

高田：そうそう。入ってた。あの人たちの上音が面白くて、ちょっとやってみようかと。そういう挑戦みたいなものはあるけど、基本的には真似をしながら自分のものにしていきたいなと。

ベーシストやドラマーとしてインスパイアされた他のミュージシャンはいますか？

姫野：リズムを考える時は、やはりいわゆるダンスミュージックが一番参考になりますね。“ドチ・ドチ”（テクノのキック・ハットを真似する）とか。ああいうハットの綺麗なサウンドはマシンで出しているので、人力では無理なんですけど、そのニュアンスをどうやったら自分でも出せるのかとか、そういう部分を個人的に色々試したりはしました。ですが、やはり人力ですから限界はあります。でも、叩き方も、前ほど「バーーー！」とはやらなくて、もっとタイトにして。あとは今まで出してた気持ちみたいなのを極力抑えて、なるべくタイミングを重視して、そこから緩やかなグルーヴを作っていくみたいな、そういう部分は結構意識しています。

共感できるアーティストはいますか？　例えば、ベルリンであなたたちと同じイベントに出演していたCarter Tutti Voidのアルバムは共通点が多いと感じました。聴いているとあなたたちの作品を聴いている時と同じような感覚を得ます。

姫野：Throbbing Gristleはもう、私たち大好きなんで。だからCarter Tutti Voidも凄く好きだし、格好いいと思います。彼らに影響受けたかというと、もちろんサウンドを聴いているので多少は受けてるかもしれないけど、あの人たちはトラックをかなり作り込んでいて、その上にギターやノイズを乗せていくというスタイルですよね。似ていますかね？　まぁ、好きなんで、似ている要素はあるかもしれないけど。

在川：世界観とか。

姫野：でも、断然凄いなと。彼らのライブを見たけど、凄く格好よくて。

在川：日本では、人力という意味で共通しているのはgoatですね。goatはなんか目標が似てるなと。彼らの方が断然上手いんですけど、そう感じる時があります。

あなたたちの目標は？

在川：ストイックに人力でどこまで出来るかですね。

今だったらどこまで出来ると思いますか？

姫野：どういう意味ですか？　演奏時間？

多分それが一番分かりやすいですよね？

（一同笑）

在川：集中力の問題？　（姫野氏に向かって）何分叩ける？同じことをやり続けるのはどれぐらい可能かとか？

姫野：今やってるのがもう限界。結構大変ですから。テンポが速いし。もうちょっと遅くなったらもうちょっと出来る。

今のテンポは？

姫野：”B”は149ぐらい。めちゃ速いんですよね。朝とかだとキツい。

在川：でも130ぐらいだったら、やる音楽がまた少し…出来ることが増えていく。テンポを落とせば余裕が生まれてくるので。刻むだけじゃない、他のアイディアが色々出てくる。

今話していて気付いたんですが、“B”には“B-1”、“B-2”などがありますが、あなたたちは全部同じ曲として考えているのでしょうか？

姫野：基本、“B”はループというか、グルーヴの元になっている部分が一緒で、そこからサウンドが徐々に変化していく。だから、私の中では“B”というひとつのテーマがあって、その中の細かい区切りとして“B-1”、“B-2”、“B-3”、“B-4” があるという感じです。

大学在学中に結成されるバンドは東京のライブシーンでかなり多いと思いますが、その中でもにせんねんもんだいのように15年間以上活動しているバンドは少ないですよね。長く続けてこられた秘訣は？

姫野：多分真面目なんです（笑）。みんな真面目。

在川：時間通りに練習にやってくるってのを繰り返しているうちに、あっという間に時間が過ぎました。

高田：練習は週２回。ライブが近くなるとほぼ毎日練習です。

自分のレーベルからリリースを続けていますが、そのメリットは？

姫野：宣伝とか、そういう部分はコネもないので上手く出来ていないんですが、やりたいように出来るので。それが一番のメリットです。

他のレーベルからオファーは来ませんか？

姫野：あんまり来ないですよ。

在川：自分たちでやっちゃってると、外から見たら「この人たちは自分たちで完結していて、その中でやっていけるんだろう」って思うんじゃないですかね。

姫野：私たちが凄くラッキーだなと思うのは、坂本（慎太郎）さんのzeloneから2年前ぐらいにアナログをリリースしてもらったり、イギリスのレーベルBlast First Petiteが『N』をライセンスしてくれたり、あとはClouds Hillというドイツのハンブルグのレーベルがライブ盤をアナログでリリースしてくれたり、Smalltown（Supersound）もリリースしてくれたりと、日本では自分たちでリリースしていますが、それ以外の色々な場所でちょっとずつリリースしてくれるという広がり方があることですね。それは凄く有り難いなと思っています。