Radiohead - TKOL RMX 1234567

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  • ここ最近のRadioheadにおける一連のリミックス・シリーズはそれぞれ異なるキャラクターを持ち合わせているけれど、このUKの伝説的なバンドが現代のダンスミュージック・シーンを的確に把握していることはまちがいない。ここに届けられた彼らにとって初の正式なリミックスアルバム『TKOL REMIX』はまさにその点を象徴している。Blawan、Pearson Sound、Jacques GreeneそしてShedといったリミキサーが参加したこのアルバムは、Radioheadの公式ウェブサイトを見てもわかるように彼らの音楽的好奇心を如実に反映したものとなっている。ここ最近Tom YorkeがLow End TheoryやBoiler Room、あるいはMary Anne Hobbsらと密接な関係にあることを考えると、Radioheadがベースミュージックに接近していることはとりわけ不思議なことではないだろう。2枚組という膨大なヴォリュームで届けられたこの『TKOL REMIX』は昨年のオリジナル・アルバムのリリース以降に発表されたさまざまなリミックス・ヴァージョンが纏められている。 リミキサー側からのRadioheadの曲に対するアプローチは、概ね2つのルートに分けられる。まずひとつは、オリジナルの演奏をリアレンジしてベースミュージック的なサウンドに作り替えるというもの。もうひとつは、サウンドをそっくり作り替えた上でYorkeのヴォーカルをその上に載せるというもの。前者のアプローチは、時折新鮮みに欠けるものになってしまいかねない。Jacques Greeneは"Lotus Flower"を彼の典型的なスタイルともいえる、スムーズで骨組みだけのハウスビーツに転化させているし、ドイツのデュオAnstamはPhil Selwayのドラムを複雑な模様のタペストリーのように編み込み、彼ら独特のダークな雰囲気に仕立て直している。しかしBrokenchordが手掛けた"Give Up the Ghost"のリミックスやSBTRKTが手掛けた"Lotus Flower"のリミックスなどはRadioheadの非感情的なサウンドのそのまま延長線上にあるようにも思える。ふたつめのアプローチはダンスフロアーを見据えたもので、特にこのアルバムの場合2枚目のディスクにそういったリミックスが集中している。ここでBlawan、Modeselektor、Objektらはハードでありながらもどこか引っかかりのあるテクノを披露している。このあたりは、このアルバム中ほとんど唯一といっていい刺激的で新しい感覚を感じさせてくれる部分だ。 このアルバムに参加したリミキサー陣がハイプであるかどうかはさておき、このアルバムに収められたいくつかのヴァージョンには実に平凡で退屈なものが含まれていることは否定できない。Shedがリミックスを手掛けた"Little By Little"は彼独特の緊張感のあるリズムが続き、やがてそれが彼得意のブレイクビーツ的展開に持ち込まれるのを期待させるが、実際はそうはならずにやや肩すかしの感。Jamie XXは"Bloom"をつかみどころのないぼんやりとした2分間のトラックに仕立て直しているし、Caribouが手掛けた"Little By Little"のリミックスはオリジナルの陰鬱さをさらにグレイな色合いにしてしまっている。 リミックスアルバムという企画は厄介なもので、そこに一貫性やフロウ、物語性を持たせることはなかなか難しく、このアルバムもそうした点で成功しているとは言い難いところがある。リミックスを依頼されたアーティストが自分らしさをその中に反映させようという意図それ自体は否定できないし、仕方の無いことだ。もし自分らしさを刻み込まなければ、結果として出来上がる音楽は非常につまらなく没個性的なものになってしまうだろうから(Mark Pritchardが手掛けたヴァージョンを聴けばわかるはずだ)。間違いなくRadioheadは21世紀における最もエポックメイキングなバンドのひとつだが、そんな彼らでもリミックスアルバムというフォーマットを再発明することはいまだできていないようだ。とはいえ、これだけ多様なリミキサーが参加しているアルバムなので、そのうちひとつくらいは気に入るトラックを見つけることは出来るはずだ。