Ben UFO - Rinse: 16

  • Share
  • Ben UFOは昨今では珍しく、DJ活動のみでのし上がってきた若手である。彼の名前でリリースした作品はまだないものの、彼の本名であるBen Thomsonという名前はHessle Audioやpangaea、Pearson Soundのリリースにおいてクレジットを見つけることが出来るはずだ。Oneman's showに次いで賞賛を受けるロンドンのパイレート・ラジオ番組RInseへの出演を経て、同名のミックス・シリーズの最新作に彼が名を連ねるのは自然な流れだと言うべきだろう。彼はクラシック・ハウス、ヴィンテージ・ガラージ、そしてもちろんダブステップなどを包括的にプレイできるDJであり、RinceのDJらしくダブプレートを多用したセットを得意とする。Ben UFOのセットでプレイされるレコードはまさしく予測不可能であり、このミックスにもそういった性質がよく表れている。トラックリストに載っている名前をしげしげと見つめても、そのトラック群がどのようにしてミックスされ調和を見せるのか想像するヒントを見つけることはできない。 昨今のダブステップとテクノ/ハウスの接近を象徴するように、ThomsonのミックスはXDBやKassem Mosseで幕を開ける。どちらの名前もロンドンというよりドイツで馴染みの深いアーティストだ。そこからDro Careyのダークで風変わりなトラックやSTLやChampion、Lerosaなどのトラックへと導かれる。しかし、『Rinse:16』は通り一遍のハウス・ミックスではない。29ものトラックを通して、ThomsonはBoddika & Joy O "Swims"のようなフロアライクなものからActress "Ghosts Have a Heaven"のように最も風変わりなものまで現代のベース・ミュージックのほぼあらゆるスタイルを網羅し、しかもその先にあるスタイルを提示する。不規則でありながらも同時に非常にフォーカスされたミックスであり、幅広いトラックを用いつつも散らかった印象は全くない。なにより新鮮なのは、このミックスが単なる最新のダブプレート・ショウケース的なものに収まっていないところだ。たしかにJam Cityの"Arpjam VIP"やPearson Soundがリミックスした"Sicko Cell"などレアなトラックも収録されているが、あくまでもこのミックスの肝はそこではない。Thomsonは過去数年のトラックを最大限に生かし、その潜在能力を引き出しつつダブステップの未来を見据えたミックスを披露しているのだ。 このミックスに収められたトラックのセレクトには、ThomsonのDJとしての自身と優れた技巧が確かに息づいている。エクスクルーシヴなトラックばかりでこうしたミックスCDを構成してしまうのは常套手段だが、そういった流れに敢えて追随しないところが彼の自信の表れでもあるのだろう。実際に、ここには息をのむようなミックスがなされている。たとえば2562の金属的なトラック "Winamp Melodrama" がKarennの軽やかなトラック"Caretaker"にミックスされていくところなどはまさにその好例だ。このミックスは、DJという行為がただ単にビッグネームの未発表トラックをこれ見よがしにクイックミックスで繋いでいくことではない、ということを思い出させてくれる。このミックスのように、プレイするレコードの説得力のみで聴く者を立ち止まらせ考えさせるものはめったに無いと言えよう。『Rinse:16』はおそらく昨今のダブステップのシーンにおいて最も冒険的で雑食性の高いミックスであると同時に、このミックスシリーズでも屈指の内容だがBen UFOはただいつもの彼のスタイルを披露しているに過ぎないという言い方もできる。この事実ひとつとってみても、非常にスリリングなミックスCDだと言えよう。