Marcel Dettmann - Translation EP

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  • OstgutからのMarcel Dettmannの最新作はまず意外にもあっさりとした2分間のドローンと薄いビートに絡むNASAの無線交信をあしらった"Barrier"から始まる。しかし、ここからが本番だ。続く"Translation One"は身悶えするような、痛烈なリズムが敷き詰められ、いびつな繭から抜け出そうとするエイリアンのもがきのような印象さえ受ける。鋭いパッドのスイープと硬質なハイハットが暴力的なうねりを見せつけながらトラック全体を支配している。いっぽう、B面の"Translation Two"はややゆったりしたところがあるものの、それでも非人間的な感覚は相変わらずだ。無慈悲なキックドラムの上でつかみどころのないブリープ音(もしくは浮遊音)が縦横無尽に飛び交い、トラックの最後まで無秩序に跳ねまわっている。その粘着性のあるトーンはざらざらとしたハイハットでシステマティックに区切られ、機械的な往復運動を繰り返す。最後を飾る"Planning"はO/V/Rが昨年リリースした"Post-Traumatic Son"にも似たトラックだが、張りつめたシンセが蜘蛛の巣のように覆い小節のなかでせわしなくランダムな上下動を繰り返している。 Dettmannやその周辺のアーティストが所謂伝統的な楽曲の構造を拒否し、こうした「スケッチ的な」トラックばかりにこだわる理由を知りたければ、このEPはまさに好例といえるだろう。5分かそこらの長さの機能的なクラブトラックにおいては、装飾的なブレイクダウンやクライマックス、リフレインなどはほとんど不要という事なのだ。Dettmannの創るトラックの中にメロディックな要素を見つけて特定することは非常に困難だが、その澱みの無いエンジニアリングと相まって、それこそがDettmannのこのレコードをかくも特別なものにしている理由でもあるのだろう。かの有名なBerghainのサウンドシステムに最適化したトラックを創るという点にかけては、やはりDettmannをはじめとしたBerghainのアーティストたちに肩を並べる才能と技術を持つ者はおそらく他にはいないだろう。ただ、このEPをただのスタジオモニターで聴いただけでは全てを感じ取れないところにある種の失望を憶えるのも確かだ。ただ、遅かれ早かれしかるべきサウンドシステムでこれを聴く事になるのだから、まあそれで良しとしておこう。
  • Tracklist
      A1 Barrier A2 Translation One B1 Translation Two B2 Planning