Desolate - The Invisible Insurrection

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  • Fauxpas MusikからリリースされたDesolateのデビューアルバムを語るに当たって、次に挙げる二つのことを避けて通るわけにはいかない。ひとつめは、これはSven Weisemannの作品だと言うこと。そしてふたつめは、これはBurialが過去に作ったことのない最高の出来のアルバムだ、ということだ。これらの二点は、もちろん関連している。Weisemannの本名名義での作品、とくに"Xine" には、時折、前述のUKのプロデューサー、Burialのガラージとダブステップのコンビネーションに見られる種類の物悲しさがある。しかしWeisemannはDesolate名義の下では、彼特有の柔らかいピアノ音とダビーなベースラインを、シンコペーションのビートと結合させているだけのようだ。だから、Burialのまねごとだと簡単に片付けてしまうことも出来るのかも知れないが、作っているのがWeisemannであるということを考えると、ベルリン在住のプロデューサーが、自分が知っている唯一の方法でもって2ステップを作っているというふうに捉えられる。 だからと言って、WeisemannのサウンドがBurial風だと言わないわけではない。単に、彼が誠意をもってこれらの音楽を着想したと言っているに過ぎない。ミニマルなピアノ曲を聴けば、彼がいちばん好きなのは黒鍵だということが分かる。Mojubaからリリースされた最新の12インチを聴けば、彼が誰よりもインストゥルメンタルな音楽のアレンジに長けていることが分かる。彼が3つ(もし彼を、Just Another BeatのJouemプロジェクトにおける陰の張本人とするならば、4つ)の異なった種類のダンスミュージックをプロデュースするのに成功していることは、ちょっと信じられないような話である。だが、彼がDJとしてブースに立つ時のエネルギッシュさを見たことがある人なら、さほど驚かないかも知れない。Weisemannは、まるですべてのレコードがラストの曲であるかのようにプレイするのだ。たとえそれが、穏やかなディープハウスであったとしても。 "Divinus"がWeisemannのセットのどこにハマるのかは分からない。もしくは、彼はこれらのトラックは全然かけないのだろうか。これらは、ウォーミングアップもしくはクールダウンに適しているようだ。ほとんど全ての曲にビートがあるにはせよ、単に伴奏のようなものとして添えられているに過ぎない。The Invisible Insurrection は第一にムードミュージックであり、次に電子音楽であり、6番目か7番目にダンスミュージックである。 Weisemannの"Xine"の難点のひとつは、その長さにある。20の小曲の全体を通して同様の感覚になるのだが、少なくとも8つのトラックは、別段問題もなくもっと短く出来たのではないかという気がする。 The Invisible InsurrectionのLPバージョンは9曲のみの構成となっている。独想的なみじかい曲(2曲の"Farewell")を含む完璧な36分となっており、それぞれの面で中心となるトラック("Cathartic" と "Divinus")を聴かせてくれる。これが賢明なエディットだったかどうかは分からないが(疑わしい)、もしくはこれがLPフォーマットの限界だったのかも知れないが(こちらのほうがありそうな話だ)、「もっと聴きたい」という気持ちにさせつつも、と同時に、「本当は必要ないんだけどもね」という自覚は持っていたいような気持ちにもさせるアルバムである。
RA