Setouchi Beat Summit 2019

  • K-BOMB, YPY, SHIZKA, 山川冬樹らが瀬戸内海に集結。香川のノイズ喫茶iL企画のパーティはオルタナティブな何かを提示した。
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  • 香川県・高松市にて店を構えるノイズ喫茶iLの浜吉 竜一氏が、久しぶりに外部にハコを借り、エポックメイキングなパーティを企画した。Setouchi Beat Summit 2019と題されたそれは、夜更かしE.N.T.、HONMA (RICH MONDO)、Rhythm Jones、phemeと言った地元アクト、そして岡山を拠点に活動するDJ/トラックメイカーのSHIZKA、goatの日野浩志郎によるプロジェクトYPY、心臓の鼓動や頭蓋骨の響きなど身体内部の音を使って作品を作る現代美術家の山川冬樹、Think Tank~Black Smoker主宰でジャパニーズ・ヒップホップ随一の奇才・K-BOMBの4人のゲストから成るパーティだ。(2017年には同タイトルでSIMI LAB/summitのOMSB,Hi’Spec、そして山川冬樹をゲストに開催) 肌寒い2月初旬、地元アクトが場を暖めた会場は、ゲスト前から独自の磁場がすでに出来上がっている。クラブ・イベントのフォーマットを取りながらも、どこかのバランスが意図的に崩されたまま安定している、そんな空気だ。 SHIZKAによるDJセットが始まる。ボーカル・チョップ系のフューチャーベース風のトラックに始まり、トライバル・ビート、バイレファンキ風と多彩なリズム感覚のトラックが続く。ビートは土臭く猥雑ながら、ウワモノは独特の浮遊感・清潔感のある選曲は「非ヨーロッパ圏の全く知らない異国のチャラいDJ」と形容したくなるセンスに満ちている。 続いてYPY。ボトムレスな物音系のノイズのカサコソとした響きに始まり、ミュージック・コンクレート風のブツ切りのドローン。くぐもった音の壁にゆっくりと鈍い光が差し込むように、少しづつノイズがリズムを刻み始める……。ツジタナオトによる、光の軌道が生き物のように這うVJが、空間をじっとりと液状化していく。中盤以降はJamal Moss~Frakなどの異形のテクノ/ハウスを思わせる、躁的なドラムマシーンが響く。 そして山川冬樹。数種類のエフェクター類とギター、ランプがギッチリと並べられたステージはガレージのようでもあり、その中心に登場した上裸の山川の姿は、コンセプチュアルな現代美術の作家というよりは、ブルース奏者の生々しい気迫を思わせる。 胸部に取り付けられた小型マイクが山川の心臓の音を拾い、その鼓動に合わせてランプが点滅する。ギターを使ったパフォーマンスは、弦を手で爪弾くことなく、ボディそのものの振動・ノイズを増幅させて音を放つ。それは細胞や遺伝子の動く音をイメージさせる。山川冬樹のサウンドは (陳腐な表現を恐れずに言えば) 命そのものの音を作品化しつつ、それがパフォーマンスだけに留まらず、より通俗的に、メディア的な意味で「音楽」としても強度を持って表現される。その証拠に、クライマックスのホーミーから、ステージ上手に登場したK-BOMBとシームレスにセッションに入り、ドローンのように響くホーミーとサンプラー手打ちによるブレイクビーツが重なると、AnticonかアメリカのMush Recordsあたりのダウンテンポ/トリップホップがダンスフロアーに現れた。 K-BOMBはAKAI MPCと二台のKORG KAOSS PAD、そしてラップのパフォーマンス。"真夜中のJAZZ"ではなく会場の名前を織り込んだ"RIZIN'のJAZZ"、あるいはHi'Specとの"やくそくのうた"などのリリックの断片を唱えつつも、定型の曲ではなく、即興性の強いラップ。「ディレイは音を未来に送るタイムマシーン」と言ったのはLee Perry かKing Tubbyだったか、意味を持った言葉と生物そのもののうめき声の境界で響くK-Bombのラップのディレイは、遠い過去と未来を自由に行き来するようだ。原初のカオス。 カオスという意味では、客層についても。年齢も含め様々で、金曜日の夜というタイミングもあってか、スーツ姿のサラリーマンも数人、女性も多い。面白かったのが、会場前で外の空気を吸っていると、年季の入った数名のB-BOYらがエントランスに駆け込みながら「K-BOMB来るんはヤバいやろ、K-BOMBやぞ、絶対ヤバいわ」と興奮気味に語り、その内の一人が「K-BOMBは知っとるけど、この人らは誰なん?」とフライヤーの山川冬樹ら他のゲストらの写真を指差すと「いやあ、知らんけどとにかく芸術家やろ!ヤバい人らやろ!」と更に興奮しながら入場していった様子だ。 エンディングはRhythm Jones (AFRA & INCREDIBLE BEATBOX BANDのメンバーで、近年は香川を拠点としつつ、プロデューサーとしてFebbやPrimalなどにトラックを提供している) によるDJセット。25時クローズという早めの構成ながら、場の空気は充分に燃焼しきったものだった。ワンマン、ワンジャンルのイベントではないからこその独特の磁場がそこに生まれ、世代やスタイルにとらわれないオルタナティブな何かが提示されているパーティであった。 Photo credit / Xiao CHAu
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