FFKT 2019

  • かつてTaicoclubと呼ばれたフェスティバルが、国内屈指の電子音楽イベントの座を守り続ける理由を証明した。
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  • 13年間に渡って成功を収め続けてきたTaicoclubが、今年度の開催にあたって、変身を遂げて帰ってきた。名前をFFKT(Festival Formerly Known as Taicoclub=かつてTaicoclubと呼ばれたフェスティバル)に改名し、音楽的なアプローチにも変化を見せた。ポップでメインストリーム寄りのアクトのブッキングに傾倒していたのに対し、今年のプログラムはフェスティバル初動期のエレクトロニックなルーツに帰るというオーガナイザーの意向が読み取れた。ラインアップはビッグアクト(Mount Kimbie、Luke Vibert)に加えて、バンド、地元日本で知名度の高いアクト(DJ Nobu、Powder、Chee Shimizu)、才覚あるアジア圏のDJ(Hibiya Line 、MIIIA)、フェスティバルと長年の付き合いが続くアーティスト(Nick the Record)、などなどだ。 FFKTの会場は、キャンプ場と子供の遊び場を足して割ったような「こだまの森」 、長年Taicoclubのホームであった同じ会場だ。三つのステージ:Steel(ここがメインステージ)、それからOngakudo、最後にCabaretだ。二つ目のステージのOngakudoは屋外劇場のようなステージで、バンド形式のアクトはここで演奏した。同時に、格好のチルアウトエリアの役割も果たす。森の奥にひっそりと佇むCabaretは、針葉樹に囲まれ、御伽噺のような雰囲気を醸していた。レトロなバンが停めてあり、これがDJブースの役割を果たしていた。
    スイス系ベトナム人のDJである Hibiya Lineがフェスティバルのオープニングを務めた。メインステージであるSteelで、リラックスしたハウスを聞かせる彼のプレイ中、かくれんぼをして遊ぶ子供達。セットの終盤にかけて、満員に膨れ上がったフロアに向けて、イタロ・ハウスに転向した。この時、微笑ましいことに、ダンスフロアで踊る幼子たちの姿が見られた。次いでLuke Vibertにバトンが渡ると、彼はAphex Twinの曲をいくつか繰り出し、そしてクラシック・ハウスやレイヴなトラック、90年代や00年代の懐かしのヒットなんかに切り替えた。その内の一つはMr Oizoの"Flat Beat"だった。太陽に熱せられた駐車場を借りたダンスフロアに、一気にエネルギーと笑顔があふれた。Vibertによって、雰囲気は作られた。 "Made To Stray"で最高潮に盛り上がったMount Kimbieのライブセットを見終えると、僕はCabaretステージのオープンを務めるMIIIAのセットの終わりに駆けつけた。思いの外たくさん歩くこととなった、巨大な金属の滑り台や、森の中で迷子になって戯れるダンサーを横目に、Spangle call Lilli lineという日本のインディー・バンドが観客を喜ばせているステージを通り過ぎた。ちょっとしたハイキングを終え、到着するや、MIIIAのハードで、ダークで、ファストな音による、他のステージとはまるで異なる世界が待ち受けていた。観客を夜の帳に誘い込むような音だった。ついに辺りが暗がりに包まれ、視界が数メートル先に限られた頃、彼女の選曲は実にしっくりと来た。その後のFlorian Kupferの奏でるグルーヴィーなクラシックを織り交ぜたハウスは観客を満足させていたものの、MIIIAのセットほど時間帯にしっくり来ていたと言い難いだろう。日本人マルチ・インストルメンタリストのTentenkoのセットについても同様のことが言えるかもしれない。ブレークビーツに乗せた彼女の歌は嬉々溢れていたが、タイムテーブルの中で少し浮いていたと言わざるを得ない。
    夜中の11時頃になると、Skee Maskを聴くべくSteelに戻った。彼は高速のテクノのヒットを繰り出していた。気温は10度近くにまで冷え込み、僕は休憩を取ることにした。冷え込んだ体を起こしてくれたのは、DJ Nobuのセットだった。普段よりも落ち着いた選曲をしていたものの、起き抜けの体に電撃を通すのにぴったりだった。風呂を済まし(温泉を楽しめたのも、フェスティバル中のハイライトのひとつ)、Nick The Recordを聴くべきか、それともPowderか、難しい選択を迫られた。日本でギグを行う機会が少ないという理由で、Powderを聴きに行く決断をした。彼女のスペーシーなセットは、アシッド・ハウスやハウスに、ところどころディスコを織り交ぜ、いつまでも踊り続けていたい観客の要望に応えて、時間を優に押して延長された。歓喜溢れ、カーニバルのようなバイブスが満ちていた。 Photo credits / Wataru Kitao - Lead, Tents, Ongakudo, Cabaret Tamakoshi Nobuhiro - Powder