Airium 2019

  • 北海道は岩見沢にて、地元の仲間精神に溢れるテクノ主軸の野外パーティーが3年ぶりの開催を迎えた。
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  • 自然豊かな北海道の中でも、大規模なロック・フェスティバルはあれど音楽に特化した野外パーティーは意外なほど少ない。そのため2016年にスタートしたAiriumは注目していた存在であり、3年ぶりの開催となる今回は大きな期待を抱いて参加した。Airiumの中核を担うのは札幌でArchiv、Jetstreamというパーティーを主催し、都内でのレギュラーパーティーやFuture Terrorへの出演も経験してきたDJ Occa、そして先述のJetstreamを共に主催し国内外のゲストと共演しながらDJ・パーティーの経験を積んできたNasaとUmiにManabeが加わった4名だ。 今回の会場は前回から移って岩見沢の山中に位置する幌向川ダムキャンプ場。木々に囲まれながら空もくっきりと見えるロケーションは抜群で、100名以上は余裕で過ごすことができる。近辺には温泉付きのロッジもあるのでキャンプとしての過ごしやすさも申し分なしだ。札幌の市街地からでも車で1時間程度と、スムーズに向かうことができる。 キャンドルで彩られたエントランスを抜け、足早にキャンプ場奥のブースへ向かうと、Inaによるシステムの鳴りを試すようなエクスペリメンタルサウンドでパーティーがスタート。続いて最若手でありPrecious HallでMethodとStromaを主催する新鋭Tomokiは前のDJのトライバル的なムードを引き継ぎよりハウスの方向へ。音数を丁寧にコントロールしUSテックハウスっぽい展開へ。3番手はPluie/NoirやRotateといったモダンハウス・ミニマル系レーベルからリリースしつつ、SJ Tequillaと共作を行うなどロウハウスの周辺とも交流の深いベルリン在住のYuzo Iwata。DJも既存のフォーマットをどれだけ避け、新鮮な感覚を得られるよう常に獣道を探るようだった。アブストラクトな方向からじっくり重心の低いロウな四つ打ちを経て、マッドなマシングルーブに着地。Precious HallにてSignalを主催するHigashiはテクノとディープハウスの間を縫うようなサウンドと没入感をもたらす展開。抑揚を抑えつつしっかりとツボは突くグルーヴはまさにベテランだ。今回のサウンドを担うJammin' Sound Systemの発起人Ogashakaは、先鋭的でハイファイなベースミュージックで自らのシステムを活かしきるセット。BPMではなくサウンドの感覚的な繋がりで聴かせるようなプレイが印象に残った。
    バー・フードも抜かりはなく、オフィシャルバーでは同じく札幌の名店PROVOと後述のスパイスの穴ムジナのオリジナルドリンクをはじめとしたメニューが揃い、常に人が集っていた。フードはDJとしても精力的に活動するMitayoが切り盛りするスパイスの穴ムジナの絶品カレーやお粥に加え、白老のHappy Hokkaido Kitchenのエスニックフードも満足度高め。バー・フードエリアでは宙に結晶が立ち並ぶようなデコレーションとスクリーンに映し出されたサイケデリックなアートワークも幻想的な空間作りに一役買っていた。 夜も更けたところで、北見のベテランDJ Channが一気に130近いBPMのファンキーなミニマル〜テックハウスを炸裂させる。シンプルなトラックもアグレッシブにプレイすることで魅力を際立てたせており、北海道のローカル層のハイレベルさを存分に体感した。初日のラストはあいにくの雨模様となったが、主催のUmiは勢いを受けたタフなグルーヴのテクノで最後まで盛り上げ、Manabeのエクスペリメンタルセットへバトンタッチして締めくくった。 二日目は柔らかな日が差す曇りのち晴れの空模様の下、サウンドデザインを手がけるJammin'music campによる爽やかなフレーズとクリアな鳴りが映えるダブからスタート。続いてSky Walkin主催Macchiが浮遊感あるディープハウスやモダンなミニマルを織り交ぜフロアを本格的に起動させていく。Mitayoはこの二日間のなかでも一際クセのあるリズムやアクの強いフレーズが飛び出すハウスセットで、聴衆を振り回しすぎずテンションをコントロールする手腕も光っていた。 Tha Blue Herb RecordingsやFoureal、Synapseからのリリースに加え、国内外でのDJ経験も豊富なNaohito Uchiyamaは、陽が落ちるムードを一気に駆り立てるシリアスでディープなテクノへ移行。しかし平坦な展開はなく曲の温度感で波を作るような熟練のプレイだ。小樽を拠点とするモジュラーシンセサイザーの匠Shohei Takataのライブも圧巻で、超自然的な環境音のレイヤーで奏でる極上のリアルタイム・アンビエント。眩しいほどの月明かりと満天の星空の中で格別の音響体験を味わえた。 Precious HallでMINIMALISM IS SPACEを主催するMalは野外に映えるトリッピーなテクノで、終盤に向かうムードを一気に作り上げていく。フロアに訪れる人々からもここからラストまで踊り続けようという熱気が感じられた。そこに応じるNasaのライブはTR-909とYamahaのグルーヴマシン、そしてWaldorfのモノシンセという潔い構成。アシッディーなフレーズやエフェクト、そして骨太なドラムが際立つパワフルなテクノ。ジャストなビートとシャッフルを織り交ぜた展開で90分という尺を走りきった。
    満を持してのラストはAirium発起人のOccaによる、精密なミックスで磨き上げられた迷いのないテクノ。溜めと攻めのバランス感覚が素晴らしく、グルーヴの躍動感を自在にコントロールして踊る人々を牽引してくれた。アンコールの135BPMを超えるセットはさらに切れ味抜群で、ドライブ感溢れる展開に再びの雨も気にならないほどに惹きこまれた。 2回目とは思えないほどに運営面も整っており、二日間心置きなく音楽とロケーションを楽しめた。まさに札幌を中心としたクルーの総合力が遺憾なく発揮されたパーティーと言えるだろう。またOccaをはじめとした主催陣が道外のフェスやパーティーにも足を運んでいるためか、随所に「何処かと同じようなパーティーにはしない」という気概も感じられた。特に巨大なプレートが突き出してきたようなブースは抜群のインパクトで、Occaは「(映画2001年宇宙の旅に出てくる)モノリスみたいだよね」と笑っていたが、それに匹敵する存在感を放っていた。モノリスの中央部分は半透明で、裏からレーザーを当て光の帯のように見せることでサウンドが具現化したようなクールなビジュアルを楽しめた。Jammin'Sound Systemは強力なベースだけではなく、中高域の解像度も高く予想以上にハイファイな印象。デジタル音源、アナログ音源どちらの魅力も余すことなく伝えていた。 現在はベルリンに住むYuzo Iwataや東京拠点のIna、Manabeも含めると、北海道・札幌と縁深いDJで揃えられたメンツだが、決して閉鎖的ではなかった。むしろこれまで多くのゲストを自身のパーティーに招致し、共演してきた面々だからこそ、今改めてローカルの力でパーティーを創り出せることを証明したのではないだろうかと思う。 ストイックかつ享楽的なダンスミュージックを好む方なら、大いに楽しめると保証できる。「来年以降もライフワークとして継続していく」という頼もしいコメントも主催陣から伺えたので、さらに進化をしたAiriumを体験できるのがますます楽しみだ。
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