N/A and Berlin Atonal present New Codes

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  • 電子音楽の祭典として高い評価を得ているBerlin Atonalのサテライト・イベントが昨年に続き日本で開催された。今回は京都と東京の2都市にて、第一部は映画『B-Movie: Lust & Sound in West Berlin 1979~1989』の公開とトークショー、第二部はMoritz Von Oswald、Demdike Stareらがパフォーマンスを披露した。ここでは2月17日に渋谷Contactで開催された、第二部の模様をお伝えする。深夜1時前に会場に到着すると、Contactフロアでは第一部の映画の主人公でもあるMark Reederが、80年代のエレクトロやニューウェイブのトラックをプレイしていた。人だかりを抜けてStudio Xへ行くと、Demdike Stareがずっしりと重量感のあるテクノを鳴らしていた。Modern Loveからのリリースで聴ける作品群ほど実験的ではないが、ベースミュージック的な解釈をおりまぜた、低音重視な4つウチのビートで、フロアの雰囲気をしっかりと構築していた。この日、最もAtonalらしさを演出していたのはTakahashi。ニューウェイヴを中心に据え、ビートに囚われない自在なミックスを披露。時にフロアを置きざりにするほど実験的になったりと、攻めのセットを披露した。 Demdike Stareに続き、メインタイムに登場したYPYは、ミニマルなダンスビートを紡ぐ。テクノ・マナーに則ったシンプルな音構成に加えて、少しサイケデリックなテイストがあり、フロアの熱量をしっかりとキープする。ベテラン女性DJでもあるYAMAの変幻自在なDJプレイに続き、Mortitz Von Oswaldが登場。昨年、本国のBerlin Atonalでも披露されたテクノDJセットとのことだったが、実際にステージ上に目を向けると、リズムマシンを併用したハイブリッドDJセットのようだった。しっかりとした厚みのある、作り込まれたキックのサウンドに加えて、ミニマルにテクノを展開する。シンプルな音数を陶酔的に見せ、かつオーディエンスをグッと引き込むグルーヴ感に、Mortitzの巧みさを感じずにはいられなかった。基本的にはテクノでありながらも、たまにパーカッションのサウンドを織り交ぜながら、ハウスっぽくなる瞬間もあり、DJセット的な奔放さも今回のパフォーマンスの魅力のひとつだった。ラストにMortitzを持ってきたタイム・スケジュールも功を奏してか、明け方になっても熱気に溢れるフロアに応え、Moritzも予定時間をオーバーするパフォーマンスを披露してくれた。 客層も若い音楽ファンから、第一部の映画鑑賞から残ったのであろうダンスミュージックは普段聞かないようなニューウェイヴ好きな大人、それに加えて多くの外国人らが詰めかけ、ContactもStudio Xも盛況となった今回のイベントからも、Berlin Atonalに対する、注目度の高さを感じることができた。第一部の映画試写イベントは、チケットも早々にソールドアウトしており、見られなかったという人も多くいたようなので、試写イベントは再度開催してほしいところだ。日本のアクトをメインタイムに組み込んだStudio Xのタイムテーブルは、今回のイベントの特筆すべきポイントだ。結果的に実験的なサウンドからしっかりと踊れるダンスミュージックまでフロアには終始良い流れがあった。それに加えてContactフロアでも幅広いスタイルのDJが登場し、一晩でさまざまなエレクトロニックミュージックを堪能できた充実感のあるイベントであった。
RA