EPIZODE Festival 2017

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  • 大晦日から1月10日にかけて繰り広げられるEPIZODEは、トップクラスのアクト満載のラインナップに裏付けられた自信と共に、2年目の開催を迎えた。同フェスティバルの舞台となる、カンボジア南岸に位置するベトナムの島、フーコックは、10年前までは辛うじて地図に掲載されるような島だったが、潤沢な利益をもたらす観光産業ブームが起きたことによって、島にはリゾート施設が大幅に増加した。島の産業としてはまだまだ初期段階ではあるものの、今後数年間で、観光地としての魅力が島にとって非常に重要になることが証明されていくはずだ。 EPIZODEのコンセプトは近年お馴染みの、国外のプロモーターとオーガナイザーがパートナーシップを組んでエキゾチックなロケーションに赴き、インターナショナルなクラウドにインターナショナルなアーティストを魅せるというもの。BPM Festival(同フェスティバルは昨年、メキシコからポルトガルに開催地を移した)と比較されることも多いが、幸いにもEPIZODEでは、昨年1月のBPMであったような事件は起きていない。(と言いつつ、オーガナイザー陣のうちのKazantip FestivalとモスクワのクラブARMAの運営チームは、嵐と共に帰国したようだ。) ビーチフェスティバルを開催するには様々な方法があるが、EPIZODEのオーガナイザー陣は、3つのステージで構成されたくつろげる雰囲気のセッティングを採用した。ほとんどの建造物には竹材を使用。会場内にはジュースバーや気の利いたチルアウトスポットもある。世界各地からのバックパッカーが多数参加していたこともあり、会場にはレイドバックでヒッピー的な雰囲気が漂っていた。どのレポートを見ても、昨年のフェスティバルはもっとずっと参加者が少なく、その大半がロシア人だったようだ。
    インターナショナルなパーティーが南国で開催される時には、地元団体が不遇になりがちというリスクがつきものだ。しかし今回は、アジア圏のアーティストをフィーチャーすることによって、東南アジアのクラウドの引き込みにも成功した。Bambounouとの素晴らしいB2Bを2セット行なった韓国出身のPeggy Gouは今やヨーロッパのアーティストとして捉えられているかもしれないが(彼女は現在ベルリン在住だ)、香港のOcean LamとJo.Dは、アジアでの先進的な音楽の在り方を実証してくれた。小さめなステージのEggにはこうしたアクトが多数ラインナップされ、特にLamとJo.Dの2人はエレクトロと逞しいアシッドの素晴らしいセットをプレイしてみせた。 この手のダンスミュージックイベントでは重鎮が多くラインナップされることがよくある為、ある種同族のテックハウスDJが共演することもあり、今回の場合はRichie HawtinとLoco Diceが例によって平凡なサウンドを展開していた。だが、際立ったパフォーマンスも数多く見ることができた。1月6日のFreesbyステージでは、Denis Kaznacheevがウォームアップを務めた。 遊び心と表現力のある彼のセットは、後に続くSammy DeeやRicardo Villalobosの前に、完璧にフロアの空気を作った。絶好調な様子のVillalobosは、Thomas Bangalter/Bob Sinclar belter "Gym Tonic"のようなふざけたパーティーチューンもドロップ。クラウドからは熱狂的なレスポンスが巻き起こった。(もしかするとSpacedustバージョンの"Gym And Tonic"だったかもしれないが、どちらかは判断しかねた。)彼は美しいサンセットの時間に再び登壇し、あらゆるアブストラクトなリズムとトーンをもって自身のフリーキーなサイドを思う存分披露した。
    フェスティバルのベストモーメントの多くが起きた場所は、このFreesbyだった。特にアフターアワーズセッションでは、日が昇ると共に非常に開放的なヴァイブが生まれていった。1月9日はtINIとBill Patrickが抜群の様子で、Dexterの"I Don't Care"を非常に効果的にプレイしていた。同フェスティバルの主催チームのメンバーであるTyomaは、UNKLEの"Rabbit In Your Headlights"からBrad Fiedelによる『Terminator 2: Judgement Day』のオリジナルテーマへと方向転換するなど、大胆かつ穏やかなセレクションで印象的な最後のサンセットを演出した。クロージングの時間帯にはARMAクルーが登場。Hipushitが超スローでトリッピーなセットを展開した後、Orgue Electroniqueがハードウェアを用いたライブアシッドセットを、終了予定時刻を大幅に過ぎた時間まで繰り広げた。 残念ながら、筆者はフーコックからロンドンへ戻るための直行便に乗り遅れないよう大急ぎだった為、Call Superを見逃してしまった。余談となるが、そのフライトは衝撃的なほど安く、つまり来年はもっと多くのイギリス人がEPIZODEに参加する可能性がある。EPIZODEの小さなサイズ感と緩やかな姿勢は、これほどビッグなラインナップと素晴らしいプロジェクションで固められ、次の展開がどうなるのかがチームの考えに重くのしかかっているフェスティバルにとっては、珍しいものだ。(音楽ディレクター兼レジデントDJであるRoustam Mirzoevは、より多くのライブアクトやバンドを取り入れることが今の目標だ、と語ってくれた。)この2回目の開催が昨年から前進し、大成功に終わったということについては全員の意見が一致した。あの居心地の良い雰囲気を維持し、東南アジアのエレクトロニックミュージックコミュニティと一体となっていくことができれば、EPIZODEはますます加熱する世界のサーキットの中で、真にユニークなフェスティバルに成り得る。 Photo credits / Andrey Berezkin Daniil Primak Yurii Balan Pavel Borisenok Nikita Marshunok
RA