Myth feat. Fumiya Tanaka and Mikio Kaminakamura at Woal

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  • 群馬県を拠点にAOKI takamasa、Kyoka、Numbといったアクトを招致しミニマル・エレクトロニカ周辺のサウンドを地道に広めてきたOkaniwaによるパーティーMyth。12月末は2017年を締め括る特別回として、地元の盟友であり実力派DJのtakehiro imaizumiと共に2015年以来にFumiya Tanakaを招いた。さらに今回は長年Fumiya TanakaのパーティーCHAOSをサポートすベテランであり、2016年には満を持してFumiya Tanakaが主宰するToremaのサブレーベルUntitledからEPをリリースしたMikio KaminakamuraもゲストDJに名を連ねている。2017年は国産ミニマルレーベルINITからも作品を発表し、ますます実力が知れ渡っている人物だ。今回もUntitledから2枚目のEP「Evil Soroway」リリース記念と銘打って開催されている。 ちょうど主催のOkaniwaからMikio Kaminakamuraへバトンタッチした頃に入場すると、その時点で100人規模の箱は人で溢れかえっていた。Mikio氏はソリッドなミニマルとバウンシーなハウスを掛け合わせ、堅実に観客のテンションをキープするセット。氏の作品からも伺える、クセがありつつも芯の通ったセットを聴くことができた。続くFumiya Tanakaは最序盤はさりげなくミニマルな展開へと引き込んだが、そこからUKダブのようなフレーズとベースラインが強烈なトラックで一気にスイッチ。そのままオーストリアのレーベルCheapに代表されるようなアクの強い曲を続けざまに投下していく。CHAOSでよく披露するような継ぎ目なくミニマルなグルーヴを維持する流れではなく、一曲一曲に驚きがありつつも、否応無しに踊らせるような展開だ。中盤からは新譜のエレクトロテイストなミニマルテクノも交えつつ、フロアの爆発的な熱気を保つ流れに。決して短くはない時間を一気に走り切る、Fumiya TanakaのDJとしての腕力と脚力を再認識できるセットであった。 最後はMikio KaminakamuraとのB2Bも披露。Fumiya氏の爽やかなディープハウスからMikio氏が.xtrakのスマッシュヒット”Don't stop”で返す流れは往年のミニマル好きも歓喜の声を上げていた。終盤になるにつれよりアクセルを踏むようなグルーヴ感の中、県内から来たと思われる人たちはもちろん、都内から訪れたクラバーも口々に「来てよかった」と興奮ぎみに話していた。終幕後も多くの人が余韻に浸っており、主催のOkaniwa氏も「2015年の時以上の凄まじい体験だった」と満足げにパーティーを振り返っていた。訪れていた客層も様々でWoalのスタッフいわく「Mythの常連さんは勿論、Woalの別ジャンルのイベントに来るお客さんやディスコ時代から遊んでいる先輩も楽しんでいた」とのこと。 群馬県でも随一のクラブとして主にハウスDJから厚い信頼を置かれるWoal。天井の風船のデコレーションや、ブースに映える”it’s a spiritual thing a body thing a soul thing”の文字、そしてバーの裏側にもFrancois Kをはじめとした多くのベテランによるメッセージが残され、箱の歴史を感じさせる。複数のミラーボールの煌めきやストロボも、ミニマル系のイベントではやや異色と言える組み合わせではあるが新鮮であった。サウンドも四隅と天井に配置されたサウンドシステムが立体的かつパワフルな鳴りを実現しており、ゲスト両名のアグレッシブなプレイを鮮明に伝えていた。 今やベルリンを拠点に世界各国で重宝されるDJのFumiya Tanaka。都内では200~500名規模のスペースでプレイすることが多いため、100人規模の箱で聴くと一際濃厚であった。しかしこの日が特別な一夜となったのはそれだけが理由ではない。群馬を拠点にミニマルを中核としたパーティーメイクを懸命に続けてきたMythクルーと、高崎で抜群に遊べる空間を創り、保ち続けてきたWoalの積み重ねが結実していたように思う。
RA