正直に言えば、上記のようなクリエイティビティの多くは他のElektron製品でも確認できる機能群がもたらしてくれているものだ。しかし、簡略化されたワークフローが大きな違いを生み出す。ジャムをしながらシーケンスを組み立たり、パラメーターの変更を実験したり、パターンをセーブしたり、ミスしてもすぐに元に戻したりできるので、スムースかつ自由にアイディアを形にできる。勢いに乗った時にクリエイティビティ溢れるインプロを重ねていったり、躓いた時に元のパターンに戻ったりできるのも、ライブパフォーマンスでは非常に重要だ。
このような特徴はDave Smith Tempestを想起させた。Tempestには、各インストゥルメントのエンベロープやフィルターなどのパラメーターを同時にコントロールして変化させる機能とその変化を1回のUNDOで元に戻せる機能が備わっているため、激しくて奇妙なサウンドをブレイクに使用したり、激しいドロップで終わるビルドアップを生み出したりできるが、Digitaktもほぼ同じで、トラックを維持しながらパラメーターを自由に変更できる一方、ボタンひとつで設定をリロードできる。しかも、サンプルセレクトのようなパラメーターにも適用できるので、全てのインストゥルメントを同時に他のサンプルにスイッチしてサウンドをがらりと変えることもできる。Digikartではこのようなトラック全体のパラメーター変更が非常に面白いサウンドの創出に繋がるケースが非常に多い。また、そのようなサウンドをスピーディにセーブして、ビートのバリエーションとして残しておくこともできる。
また、Elektron独自のパラメーターロックと条件付きロックを組み合わせると、シーケンスにパワーとダイナミックな音楽性を加えられるようになる。パラメーターロックは各サウンドの各ステップに複数のパラメーター設定をアサインできる機能で、たとえば、AMPエンベロープやフィルターカットオフ、エフェクトの設定をインストゥルメントのステップごとに変えてアサインできる。そして条件付きロックは、そこに可変性を加える機能で、たとえば、あるステップがトリガーされる確率を75%に変更できる。このような無限の可能性がDigitaktのサウンドに息吹を与えている。