Akirahawks in Tokyo

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  • Shingo Suwaと共にレーベルHouse Mannequinの運営とメインアーティストを務め、Homopatikの一員としてベルリンのディスコ・ハウスシーンでDJのキャリアを築いてきたAkirahawksがアジアツアーを敢行。東京ではYoshinori Hayashi、Gonnoを共演に迎えパーティーを開催した。会場は渋谷宇田川町のイベントスペースWWWのラウンジフロア。50名程度のキャパシティを持つ部屋にはメインフロア同様Funktion-Oneが導入されており、さらにDJミキサーはRANEのハイエンドモデルMP2015という隙のないシステムがバックアップする。入口とラウンジを繋ぐロビーにもバーとDJブースが設置されており、フロアでダンスに集中することもできれば、ソファーでゆったりと聴くこともできる。居心地良く自由に過ごせる空間となっていた。 会場に到着するとYoshinori Hayashiが80年代後半のエレクトリックなディスコを彷彿とさせる選曲でフロアの空気を整えていた。癖の強いフレーズと展開が没入感を生み出すような感覚は、リリースする作品とも共通する。幻惑的なブロークンビーツからディープハウスへと流れをつけ、Gonnoへと橋渡しした。 欧州での活躍も目覚ましいGonnoは初期シカゴ的なリズムマシンむき出しのサウンドにスイッチし、ラフなサンプルとエフェクト音で否応なく引き込まれる展開を作っていく。レイヴィーなトラックやアシッドハウスも違和感なく挟みつつ、観客がフロアに集まりきったところでMood ⅱ Swing “Closer” をプレイ、爆発的な盛り上がりを生み出していた。その後もシンプルな展開のUSハウス(最近の彼の隠れたクラシックであるAfrika Bambaataa “Just Get Up And Dance” も)やフレンチ、UKハウスのサンプルループで勢いを繋ぎ、後半はサイケデリックな響きのモダンなハウスグルーヴに移行。ラストはDJ Hell ‎”My Definition Of House Music” で絶妙なパスを渡した。 AkirahawksはHouse Mannequinらしい、削ぎ落とされたシェイプとユーモラスさを一貫して感じさせるディスコ・ハウスセットを披露。前のめったグルーヴにシンプルなアルペジオや、ぎらつくフレーズを織り交ぜながら徐々に自らのカラーを打ち出していく。グルーヴの骨格とタフさを保ちつつ、気づけば曲をすり換えてくようなDJの手腕も抜群だ。中盤からはミニマルかつ低空飛行なハウスで流れを切り替えたと思えば、女性ヴォーカルやボコーダーで彩られたエモーショナルな選曲へ移行しテンションを落とすことなく走り続けていく。ディスコベースのダンスミュージックは数多くあるが、その中でもタイトなグルーヴの楽曲を中心にまとめ上げられている印象だ。後半になってもフロアには人がしっかりと残り、ネオンがきらめくようないなたいイタロディスコに魅了されていた。終盤ではピアノリフやストリングスが主役となったハウスを満を持して開放、さらなる多幸感をフロアにもたらしていた。 ラストはGonnoもB2Bで参加し、Akirahawks氏が温めてきたノリはそのままに、両者ともにますます雑食性の高い選曲を披露。ラストは邦楽のクラシックチューン(Gonnoが井上陽水の”Tokyo”をプレイし、Akirahawksが大貫妙子の”4:00A.M.”で返す流れは絶品というほかなかった)やNuyorican Soul “Runaway”までプレイする自由極まりない展開で着地した。 2010年より意欲的なライブイベントを展開するWWWだが、今回のようにラウンジ単体でパーティーを開催するのは過去にはあまりなかったように思える。今後注目されるべきアーティストやコミュニティに焦点を当て、発展または形成する場として小さな規模から始めていくというコンセプトとのことだが、この夜は3人のDJが抜群の相性を見せ、終電間際から朝まで活気が途切れずに続く充実したパーティーとなった。ディスコや初期ハウスがサウンドの中心でも、いずれのDJも懐古主義とは全く無縁の現代的な解釈でプレイしており、そのためか若い層も前のめりで遊んでいる姿が印象に残っている。既存のスペースを用いながら新鮮な印象の空間・パーティーを創出していたのは、私にとっても嬉しい発見だった。この日のパーティーを皮切りに今後もさらなる展開が予定されているとのことで、群雄割拠の渋谷界隈に一石を投じるものになればと思う。
RA