Tokyo Techno Society

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  • DJ Nobu、IORI、HARUKA、Wata Igarashi、DJ SOと、5人の国内テクノDJが主催する初のイベントTokyo Techno Societyが、表参道VENTにて開催された。近年、海外からも注目を集める日本人テクノ・シーンを担うDJたちが一堂に集結するこのイベント、当日は入場規制もかかる大盛況となった。 トップバッターを務めたのは何とDJ Nobu。事前にその情報を入手し、いち早くVENTのエントランスをくぐり抜けると、ブースにはNobuの姿が。ここ最近はメインの時間帯で見ることが多かったので、ゆったりとしたBPMでフロアのムードを作っていくNobuのプレイは新鮮であり、あらためてDJとしての雰囲気作りの巧みさを体感できた。続いて登場したSOは、硬質なテクノから入り、継ぎ目を感じさせない巧みなミックス・テクニックを発揮。最終的にはLabyrinthでも聴けるプログレッシブなサウンドでピーク・タイムを彩る。そのサウンドは今回のラインナップのなかでは異彩を放つ存在であったと言えるだろう。 Ioriは重心の低いビートを主体としたテクノをプレイ。特筆すべきは抜群のグルーヴ・コントロールだ。ミニマルなトラックでグルーヴを巧みに操りながら、フロアを陶酔感で満たしていく。特にアシッドやサイケデリックな音を使わず、グルーヴで恍惚感を出せるのはIoriならではのスタイルと言えるだろう。グルーヴで攻めたIoriに対して、Harukaはよりストレートなテクノで、フロアの雰囲気をガラリと変える。ポップなウワ音からアシッドなビート、さらにはちょっとやり過ぎと思えるほどカッ飛んだサウンドまで縦横無尽に繰り広げ、朝方のフロアにガッツを注入する。 そしてラストのWata Igarashiは個人的なハイライトだった。ミニマルなテクノのビートを紡ぎつつも、これまたシンプルながらに耳に残る機械音のようなサウンドをユーモアたっぷりに展開させる。すでに時計を見ると朝七時を回っていたが、疲れたり、飽きたりすることなく、Igarashiが紡ぐサウンドに没頭できた。最近は彼のライブセットを見る機会が多かったが、DJのとしてのユニークさ、ポテンシャルの高さを感じられた。 音は朝八時ピッタリに止まったが、気付けば夜中から時折バーカウンターにドリンクを買いに行く以外、かなりの時間をフロアに入り浸りだったことからも、音という側面でしっかりとした訴求力があったこと間違いない。DJ Nobu、IORI、HARUKA、Wata Igarahi、DJ SO、テクノと言ってもそのサウンドはDJによってさまざまであり、これらDJを一晩で楽しめるというのもある意味、貴重だ。そして、入場規制がかかるほどの話題を集めたというのも、国内のテクノ・シーンにとっては追い風となるに違いない。 それに加えて、フロアもバーエリアも、都内のダンス・ミュージック好きたちが集い、とにかく賑やかで楽しげな雰囲気であったことも印象に残った。イベントを終え、Tokyo Techno Societyはまったく新しい何かを打ち出していくというよりも、単純に良いテクノのDJで踊る楽しさを再確認できるイベントだったようにも思う。個人的にはなんだか東京テクノ・シーンの大きな飲み会のような雰囲気を感じたこのイベント、半年に一度くらいには、こんな感じにワイワイと開催してもらえたら、これ幸いだ。
RA