Marcellis - Sleep EP

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  • オランダ人アーティストMarcellisはThe WireのOmar LittleやGame Of ThronesのBronnといった架空の人物を思わせる。登場時間はそれほど長くないにもかかわらず、決して忘れることのできない存在だからだ。彼らと同じくMarcellisにも、もっと知りたいという気持ちにさせられる。これまでに2013年のアルバム『I Am Woman』(英語サイト)と2枚のEPだけしかリリースしていないにもかかわらず(うち最初の1枚は2004年に発表されている)、彼の音楽をもっと聞きたくなってしまうのは、素晴らしい音楽性の証だと言えるだろう。そして今回、Omar Littleのけたたましい.44 Magnumのごとく、MarcellisがついにBoddikaのレーベルNonplusからEPをリリースした。 とはいえ、「Sleep」は力まかせに制作されているわけではない。収録の3曲ではBPMの違いが40近くある他、それぞれ異なる感情が渦巻いているのだが、どのトラックも忍び寄るような遊び心を感じさせる。例えば表題曲は、Star TrekでおなじみのKhanによる「はるか昔の名残りだ / 遺伝子操作によって優れた存在になり、戦乱の世で人々を平和へ導くのだ」という言葉からスタートする。90年代のドラム&ベース以外のクラブトラックで映画の会話が使われていると、筆者は恥ずかしい気持ちになるのだが、緩いリズムや摘ままれたようなベース、そして、映画的な雰囲気による空間の中へ悪意に満ちた声を織り込むMarcellisのトラックには陶酔感がある。 "Indigo Skyfold"にも同じく映画的なムードがあり、こちらはBPM140のテクノトラックとなっている。忙しないアレンジに苛立ちそうになるものの、その分、メロウな展開が引き立っている。2分が経過した頃に突如きらきらとしたメロディへと移行する展開はまさに恍惚の瞬間だ。それと同様のアレンジが施された"Can They Do That (G Love Real Raw)"も同じく素晴らしい。ジャジーなリズムとサンプリングしたスピーチに対して、ざらついた響きのピアノループが鳴らされ、中盤になると音素材が取り除かれる(トラックをポップなものに変化させるシンプルなアレンジだ)。Marcellisが再び登場するときがやってくるまで「Sleep」の魅力が失われることはなさそうだ。
  • Tracklist
      A1 Sleep A2 Indigo Skyfold B1 Can They Do That (G Love Real Raw)
RA