Ricardo Villalobos & Oren Ambarchi - Hubris Variation

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  • Ricardo Villalobosのトラックの長さは頻繁に話題にされる。ここ4年間くらいの彼は、より俯瞰的な視点から不定形の微細な動きで展開を作っていく方法に特化しているような印象で、楽曲構造などスケールの大きな考えが既存の枠組みに収まりきらなくなっている。これは音楽理論の文脈で言えば決して珍しいことではない。だからこそ、Villalobosが新作を発表しても、彼の音楽そのものには目が向けられず、ダンスミュージックの保守的な考えで作品が話題にされることになるのだ。彼が手掛けたOren Ambarchi『Hubris』のリミックスで、キックやスネア、そして、完ぺきに生成された909のハイハットが使われていなければ、同リミックスは現代音楽のミニマルミュージックとして位置づけられていただろう。 とりわけ構造面において、「Hubris Variation」で前面に打ち出されているのはドラムアレンジではなく、次々と入り混じっていく生楽器と電子音だ。Villalobosが手掛ける良作すべてに通ずることだが、トラックを注意して聞くと、数々のサウンドが繋がりあっていることが分かる。各サウンドは次の音の場所と特性を暗に示しているかのようであり、まるでリアルタイムでVillalobosの思考を追っている気分になる。「Hubris Variation」にはめくるめく魅惑の迷宮が広がっているのだ。 収録曲の基盤となっているのは、パームミュートされたギターによる様々なサウンドだ。このリズミカルな素材はハーモニクスとテクスチャーに特化しており、Villalobosと相性がいい。ギターと全体的なアンビエンスは驚くほど原曲と同じに保たれていながら、微妙にフィルターがかけられており、互いにゆっくりと変化していくにしたがって、次の展開を誘発したり、別の音から影響を受けたりしている。そうして生み出されるのが、静かにじわじわと変化し続ける感覚だ。らせん状にかき乱されるサウンドの中で変化しているかのようなシンセのテクスチャーは、飛び交うロボット蜂に似たサウンドへと変化していく。長い時間をかけてトラックに挿入されるアンビエンスと鐘のようなハーモニクスは、その後、ゆっくりと吸い込まれていき、心地よく引き締まったサウンドスケープだけが残される。トラックの背後では多くの変化が起こっているので、ヘッドフォンでのリスニングがお勧めだ。とはいえ、深く掘り進むような低域や、ときおり弾けだすようなハイハット、そして、躍動するグルーヴは、ダンスフロアにも凄まじい興奮をもたらしてくれるだろう。
  • Tracklist
      A Hubris Variation (Part 1) B Hubris Variation (Part 2)