The Maghreban - Brooklyn / The Carpenters

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  • The Maghrebanによる2014年のデビュー作とそれに続いたZootからの諸作品の魅力はワイルドな表現にあった。しかしそれは当時の魅力であり、最近では、Ayman Rostom(The Maghreban)のハウスミュージックは滑らかで堅牢なものになっていて、それがまた素晴らしい。ただし、彼の音楽がどれだけ変化しようとも、引き続き維持されているものがある。緊張感とユーモアに対する本能的感性だ。それにより彼のトラックにはドラマチックなタッチが与えられている(たとえ笑ってしまうようなトラックであったとしてもだ)。「Brooklyn / The Carpenters」には多くの要素が詰め込まれているわけではないのだが、亡くなってしまった飼い猫Brooklynへ捧げるトリビュートや、"The Carpenters"の「サイファイな独身男の居間」をイメージしたシンセ、というアイデアにはニヤリとせずにはいられない。 "Brooklyn"で従来のMaghrebanの楽曲と異なっているのは、8分間という長さにもかかわらず、多くの要素を詰め込まず簡潔な印象である点だ。ボイスサンプルはくどくなく、ソウルに満ちたホーンは控えめに使われ、カチカチとしたパーカッションによってビートがしなやかに保たれている。ジャジーなシンセソロや破壊力抜群のベースラインはトラックのドタバタとした楽しさをひたすら引き立てている。"The Carpenters"のシンセアレンジは"Brooklyn"よりも不気味で乱雑としているが、トラックのエモーションという意味では凌駕している場面がある。シャッフルするパーカッションによって湧き立つ快楽性が生まれ、シンセのメロディが落ち着いてくる終盤に差し掛かると、トラックは予想外の悲痛な雰囲気へ変化する。引き続き、Rostomには驚かされるばかりだ。
  • Tracklist
      A Brooklyn B The Carpenters
RA