Mica Levi & Oliver Coates - Remain Calm

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  • Mica Leviが現在のイギリスで最も気になるアーティストであることは間違いない。インディバンドMicachu & The Shapesで知られる彼女の活動は複数のシーンやスタイルを横断するものだ。Demdike StareのレーベルDDSからのリリースBabyfatherやMatthew Herbertといったアーティストとのコラボレーション、Björkへのリミックス提供(英語サイト)、インディペンデント映画やハリウッド映画のサウンドトラックなど(英語サイト)、彼女の表現手段も様々だが、そのいずれにおいてもシンプルな魅力が通底している。その魅力とは、真の意味での意識の合致だ。Autechre信者であるコンポーザー兼チェロ奏者のOliver Coatesと彼女が2013年の『Under The Skin』でサウンドトラックを共同制作したのも、まず、この意識の合致があったからだ。Coatesは王立音楽アカデミー、そして、London Contemporary Orchestraの出身者だ(London Comtemporary OrchestraはこれまでにRadiohead、Frank Ocean、Actressなど多くのミュージシャンたちと制作を行ってきた)。Coatesの作品には、デジタルアーティストLawrence Lekによるインスタレーションのための音楽や、ソロアルバム2枚などが含まれている。 両者共に演奏者であり、制作者であることを考えれば、ふたりのコラボレーション・アルバム『Remain Calm』は作り込まれたものになるだろうと期待する人がいるかもしれない。しかし本作で顕著なのはインプロビゼーションの精神であり、多くの収録曲は実験的な印象だ。アコースティック・チェロ、エフェクト、そして、デジタル処理を施したフィールドレコーディングや微かなシンセを並べていくことで、作品が肉付けられている。しかし、制作技術が前面に押し出されている印象を受けるならば、実際の音楽には一貫して静かなムードと不思議な感覚が漂い、立ち現れるビートは、"Bless Our Toes"を筆頭に、心地よく脈打っている。 『Remain Calm』は非常に実験的な内容でありながら、そこには柔らかな親しみやすさが感じられるから不思議だ。この感覚はLevi作品の多くに当てはまる。はね返すのではなく、招き入れるような実験性だ。しかし、一貫したテーマが敷かれていながら、本作には断片的な印象がある。収録曲の中には1分をはるかに下回るトラックが含まれている他、"I'll Keep Going"のような長めのトラックはループを軸にして演奏されているものが多く、トラックが構築されたのちに解体されていく。さらに、素晴らしい主旋律が奏でられるものの、未完のまま終了する"County H"のようなトラックも収録されている。ハーモニーの共鳴のアレンジと洗練されたメロディによる"Barok Main"は本作でとりわけ完成度が高く充実した1曲だ。実験の場として本作を捉えたとしても、『Remain Calm』が、アイデアと才能、そして、ミュージシャンシップの豊富なふたりによる作品であることは明らかだろう。ふたりにとって初の公式リリースである本作は、このドリームダッグに何ができるのかを示唆する1枚だ。
  • Tracklist
      01. Pre-Barok 02. Bless Our Toes 03. Dolphins Climb Onto Shore For The First Time 04. Schoolhouse 05. Dragon In The Mist 06. I'll Keep Going 07. Xhill Stepping 08. Fight In The Men's Toilets 09. Barok Main 10. County H 11. New Wren Kitch 12. Say Goodbye To Everyone 13. Mob Of Waters