Mall Grab - I Just Wanna

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  • Jordon Alexanderがハウスを制作するときに使うMall Grab(モールグラブ)という名前はスケートボードの好ましくない掴み方を指している。ボードのトラック部分を持つことを指すモールグラブは素人のサインとされており、昨年、Alexanderが自分の音楽を「無知なハウス」だと説明したとき(英語サイト)に意味していたのは、おそらくこれと同じことなのだろう。2015年にデビューして以来、3か月ごとにEPをリリースしてきた彼だが、いずれの作品も素人っぽさを感じさせたことはない。Mall Grabの音楽は多様かもしれないが(少し前に発表されたトラックには"I've Always Liked Grime(ずっとグライムが好きだった)"というタイトルが付けられているほどだ)、多くの場合、L.I.E.S.的な粗めのサウンドと1080p的なドリーミーさの中間に位置するサウンドへ、90年代のニュージャージー・ハウスやKanye West的なソウルのサンプルをねじ込んだようなサウンドだ。 「I Just Wanna」を支えているのは鋭く鞭打つようなグルーヴだ。他の要素はそこまで鋭く感じられない。表題曲の高揚したボーカルはトラックの中で引き立てられ過ぎており、その背後でホーンが吹き付けられる。適切な瞬間に軽くかけるのが最も効果的そうなトラックだ。DJツールという点からとしても、この表題曲は深みに欠けている。というのも、"Feelin' Good"で熱狂的なリズムとキャッチーな男性ボーカルが使われていなければ、どちらのトラックも同じ90年代ハウスのテイストで終わっていたかもしれないからだ。一方、この2曲の中間に収録されている"Kalumbo"が素晴らしく、ブレイクビーツ的アレンジとメロディが強力だ。Alexanderはかつてのサウンドを磨きなおす才能を持っているが、本作の場合、新鮮な素材から削り出したトラックの方が説得力がある。
  • Tracklist
      A1 I Just Wanna B1 Kalumbo B2 Feelin' Good
RA