Wicked Witch - Under Your Spell

  • Share
  • Richard Simmsによる攻撃的なシンセファンク名義Wicked Witch。ワシントンDC出身の彼が80年代初頭に発表した一連のレコードは中古市場で日本円にして5桁代の値段にまで高騰している(これまでに日本のレーベルEM Recordsは『Chaos 1978-86』に収録されたトラックの多くをコンパイルしてきた)Simmsの楽曲が高価品になっているのはおかしな話だが、ワイドな広がりを持つディスコファンク"Vera's Back"は例外だ。1984年のEP「Wicked Witch」に収録された同曲で彼は多くの急展開が起こる粗放で切れのあるサウンドを打ち出した。「Under Your Spell」に収められた未発表音源はSimmsの作品の中でも特に幻覚性が強く妥協のないトラックだ。 "Under Your Spell"はシンセによってズタズタにしたファンク・ジャムだ。粗野なテクスチャーからなるこの曲では、Simmsのギターソロが攻撃的にしぶきを散らし、ディストーションによって歪んだグルーヴの中へ埋もれていく。一方、ガラスのようなサウンドで聞きやすくなったバージョン"Under Your Spell 2016"も収録されている。泡立つようなエフェクトが施され、ハンドドラムを散らした、か細いシンセトラック"Funk By U"では、不安定にトラックが構築されていく。このガタガタとした不安定さのほとんどが素晴らしい効果をもたらしている。 ドイツのDJ Slyngshotによるリミックスでは原曲の歪みがいくぶん取り除かれている。くぐもったサウンドの緩いドラム素材はそのままに、より規則的なリズムが構築されて、その周りにシンセフレーズがアレンジされている。DJにとって使いやすさが増しており、単独でも素晴らしいトラックに仕上がっているが、原曲のびちゃびちゃとした感覚が失われている。YYPYYとしてコラボレーションを行ったKoshiro HinoとYousuke Yukimatsuは、未知のトラック"In The Way Of WSB"を再構築し、ストロボライトのように刻まれるクリック音とスネア、ドローン、そして、ブロークンビーツをアシッド処理したトラックを生み出している。今回の収録曲の中ではどこか浮いた印象だが、「Under Your Spell」ではその方がしっくりくる。
  • Tracklist
      A1 Under Your Spell A2 Funky By U B1 Take A Bite Of Brains B2 Under Your Spell 2016 C1 Take a Bite of Brains (DJ Slyngshot Re-edit) D1 In the Way of WSB (YYPYY Reconstruction)
RA