Lorenzo Senni - Persona

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  • 2000年代後半以降、Lorenzo Senniはエレクトロニックミュージックの破壊路線を突き進み、グリッチとアンビエントを混ぜ合わせながらデジタルオーディオの限界を押し進め、トランスをきらめく核の部分にまで削ぎ落としてきた。イタリア人アーティストの彼がインスピレーションを見出してきたのがトランスだ。Senniが自身のサウンドを決定づける独自の領域へ初めて大きく踏み出したのは2012年の「Quantum Jelly」でのことだが、彼のアイデアは当初からすでにハッキリと打ち出されていた。長い時間をかけてゆっくりと展開していくトラックでは、いずれにおいてもRolandのJP-8000のみが使用され、オーバーダビングなしでステレオチャンネルへライブレコーディングされた。トランスがここまで禁欲的に響いたことはこれまでにほとんどなく、極めて高精度になったことは一度もなかった。 それから4年が経ち、Senniが初めてWarpから発表する「Persona」と前作の唯一の違いは、シンセサウンドが多重録音され、編集とエフェクト処理が施されていることだ。しかし、アプローチに対するそうした一見何ともない小さな変化が、彼独自のスタイルに湧き出るような表現力と幅広さを生み出している。"One, Life, One Chance"を通じて用いられる鞭打つようなシンコペートリズムや泡立つスーパーソー波形は飛散していきながら、つんのめるような熱狂とアンセム的な激しいフックを演出し、その後、トラックは朦朧とした興奮だけになるまで解体され、高らかに打ち上げられる。この展開すべてがたった3分で起こっている。マニフェスト、もしくは、咆哮であるかのように、"Rave Voyeur"ではSenniによる"点描画トランス"が、陶酔、坦々と刻まれるリズム、優雅なメロディ、そして、超現実的なサウンドデザインから成る、ダイアモンドカットされた合金へと高められている。今年、これ以上に素晴らしく処理されたシンセ作品を聞くことはおそらくないだろう。 「Persona」ではドラムの音がひとつも使われていないが、そこにいかなる意図があったとしても、本作はループを基調とした肉体的でパーカッシブなダンスミュージックを収めたEPだ。殺伐としたアレンジにもかかわらず、収録された6曲はSOPHIEのシングルよりも滑らかで、激しいビートが刻まれるトラックよりもクラブ的かもしれない。"Win In The Flat World"や"emotiva1234"といったトラックは壮大なコードスタブや弾けるシンセ音、そして、コミカルなまでに鮮明なメロディによって眩く輝きを放ちながら、リスナーを驚愕させる。そうしたサウンドを完全に消化したときに初めて、リスナーはこのトラックで踊ることができるようになるのかもしれない。 最後から2曲目に収録の"Angel"は調子を抑えた1曲だ。こちらはトランスをバラードとして打ち出しており、柔らかくゆっくりとしているが、他の曲と同じ重みと誇大な緊張感を感じさせる。自分の路線の核となる部分はそのままに今回のようなバランスを成立させたことは、Senniがアーティストとして真価を発揮している証と言えるだろう。
RA