Seekersinternational - Ragga Preservation Society EP

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  • Seekersinternationalはダブを別次元に持ち込んでいる。そこでは物理の法則は通用しないようだ。本来しっかりと構造を成すものはあり得なくシュールなものになり、楽曲は同じ道が繰り返される迷宮のごとく、眩暈を誘発する。そうした異質さながら、カナダ人プロデューサーの彼が制作する楽曲はどこかでダブの優しさを感じさせるものだった。しかし、今回のカセット作品は違う。 日本のDiskotopiaからお目見えとなったEP「RaggaPreservationSociety」では、ラガジャングルへと発展していったダブサウンドを踏襲しており、ジャングル特有の忙しないスタイルがダンスミュージックの意識に深く沈み込んでいる。トラックのキュビズム的な展開を聞いていると、馴染みのあるサウンドが破壊され、不揃いな要素によるトラックとして再構築されているように思えてくる。言い換えるなら、方向感覚が麻痺しそうになるトラックだ。サンプリングされた大量のラガボーカルが意識を引き付け、一方で、ピッチを変えたコードとアニメのようなベースラインが異なる音程を感じさせる。そして、ブレイクビーツとディレイの残響が凄惨な玉突き事故のようにぶつかり合う。トラックの構造は断片化され、ミックステープのようにトラックが収録されているため、どこが単体トラックでどこがミックス部分なのかは分からない。おそらくそのどちらでもあるのだろう。 そうして生まれる混沌は壮大だ。しかし、本作を極めて特別なものにしているのは予想外の展開だ。なぜか本作にはキャッチーなトラックが数曲収録されている。中でも格別なのがAサイド。"SoundDedication"の切り刻んだピアノコードと熱狂的な甲高い声から、柔らかなシンセコードに合わせて小刻みに変化するブレイクビーツが刻まれる"DanceGwaan(EazeUp!)"へと至り、クワイエットストーム的なスウィートさがきらめくローズと女性ボーカルによって支えられる"NoCompetition"へつながっていく。逆サイドでは"ChannelTwo(MurderousDub)"が同様に素晴らしい。スライスしたボーカルとベースラインによってあり得ないほど歌いやすいフックを形成し、壮大でセンチメンタルなピアノブレイクへと展開していく。これほど素晴らしく崩壊した作品の中では「ブレイク」という言葉は冗長に響くかもしれない。
  • Tracklist
      01. DubGanaGana 02. AmenBreadren (feat. Sipreano) 03. SoundDedication 04. DanceGwaan(EazeUp!) 05. NoCompetition (feat. K!dlat) 06. Bubblers(Inter-rude) (feat. Sipreano) 07. TellURudeBwoy (feat. wzrdryAV) 08. ChannelTwo(MurderousDub) 09. ForwardTheBass 10. GunRingoX1&2 (feat. Sipreano) 11. InterOuterNational
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