LOFT - Turbulent Dynamics

  • Share
  • いわゆる実験的クラブミュージック(英語サイト)は参照元を起点にしていることが多く、グライム、レゲトン、何でもいいのだが、馴染みのあるリズムを取り入れて、それを抽象化するプロセスにかける。引き算のアプローチを取って骨格部分にまで削ぎ落とすプロデューサーもいれば、意外な要素をどこかから持ってきて足し算するアプローチを取るプロデューサーもいるだろう。LOFTにとってAstral Plane Recordingsから初となる「Turbulent Dynamics」はそうした参照元を起点としていない。もちろん、クラブミュージックの手法は多く用いられているが、最終的には独自のスタイルを基盤としている。 異世界のようなエフェクト数種を組み合わせた猛烈なドラムソロとともに本作の主張力が瞬時に伝わってくる。"Yes"は何かが起こりそうな前兆を感じさせるトラックで、"Zissou"や"Heffalump"といったヘヴィなトラックの強度やアクロバティックなパーカッションへとつながっていく。"Zissou"で組まれる人工頭脳的なサウンドデザインとあり得ないドラムプログラミングはPANからの影響をうかがわせる。ハイライトである"Heffalump"と同様、濃密なリズムは数学的ですらあるが、変化に富むテクスチャーにより、"Zissou"が味気のない印象になることを防いでいる。 「Turbulent Dynamics」は、最もダンスフロア寄りなトラック"Heffalump"を軸に構築されている印象だ。多方に拡散していく壮大な同曲には、でたらめな印象になることなくアイデアや技術のすべてが盛り込まれている。意識を掻きむしるリズムアレンジにネクストレベルのサウンドデザインが組み合わされ、タペストリーのようにしっかりと嚙み合うように織り込まれたリズムが微細に変化/転移していく。トラックのアレンジメントも素晴らしく、明確な展開がスリリングなノリを生み出している。 "Permiter"では、ワイドなサンプル使いと立ち昇るシンセサイザーの組み合わせからLOFTのオーディオコラージュに対するセンスがうかがえる。メロディ要素を増した"With Eye Contact"には各素材が舞台上の登場人物として相互のやり取りを繰り広げているような印象を生んでいる。このトラックから、LOFTはタフなだけでなく柔らかな一面も持ち合わせたプロデューサーとしてまだまだ多くの可能性を秘めていることが伝わってくる。
  • Tracklist
      01. Yes 02. Zissou 03. Perimeter 04. Heffalump 05. With Eye Contact
RA