FIS - From Patterns To Details

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  • 自宅で何気なく『From Patterns To Details』を再生するのは止めておいたほうがいい。この作品はBGMはおろか、受け身で聞くようなサウンドトラックにはなりえない。FISが捉える波長を感じ取るには意識をまっすぐ集中することが求められるからだ。 Olly Peryman(FIS)の音楽哲学は難解に思われるかもしれない。彼は主体的なリスナーや周辺環境に影響を与える強力なパワーとして音楽を考えている。彼の制作過程には瞑想や自己反芻が含まれている。彼の制作物は高揚を感じさせ、衝動的でいて、どこかスピリチュアルであることが多く、カジュアルなリスニングやクラブの範疇を超えたところに存在している。ニュージーランドのプロデューサーである彼がSubtextに初めて提供したレコード『From Patterns To Details』はそうしたアプローチに忠実な作品だ。 上昇感のある"CMB Inna"で喚起されるのは、存在の誕生から消滅までを綴ったPaul Jebanasamによる破壊的アルバム『Continuum』と同じ神聖な壮大さだ。『From Patterns To Details』で対象になっているものも同様に意欲的で、破壊的な力からの創造を思わせる。それは1曲目の"Root Collars"の場合、まばゆく痛ましい展開として表れており、華麗な物体が創造、もしくは、破壊されている。もしも眩さがこれほど強烈でなければ、ひどく退屈な音楽体験になっていただろう。 比べて"SeaPR"はかなり耳に優しく、リズムとサウンドが身体的で聞き心地がいい。同じことは"Treat Inner Eris"にも当てはまる。こちらはより動物的な(もしくは、より人間的だと言えるかもしれない)トラックだ。3分が経過すると曖昧模糊としたノイズがどこか聞き覚えのある楽器音を形成する。ホーンだろうか? いや、おそらく違う。Perymanの音世界は完全に人工的で非現実的なサウンドで成りなっているからだ。突き詰めると『From Patterns To Details』の最大の売りはここにある。 本作にはメロディ要素がほとんどないが、"Independently Together"は違う。その結果、アルバムは少し無感情な印象になり、意識して聞き続けるのが難しくなる、昨年の『The Blue Quicksand Is Going Now』と同様、今回も過酷なサウンドとなっている。"Sieve Stack"では耐え難いほどの激しさに達するが、それでもそのサウンドに感動せずにはいられない。本作で最も繊細で聞きやすい瞬間が訪れるのは最後のトラック"Heart Wash"だ。それゆえに本作のベストトラックでもあると言えるだろう。結局のところ、『From Patterns To Details』は暗闇の中で邪魔されることなく体験できるライブ環境に適している。その環境でのみ、FISの奥深さを真に感じ取れるだろう。
  • Tracklist
      01. Root Collars 02. SeaPR 03. Treat Inner Eris 04. Independently Together 05. CMB Inna 06. Sieve Stack 07. Heart Wash