A Band Called Flash - A Band Called Flash EP

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  • Netflixの番組『Stranger Things』(英語サイト)は今年、広く知られている80年代のポップカルチャー要素を盛り込んだことで高い評価を獲得した。ありきたりな番組だと思われがちではあるが、この番組の成功のカギは元ネタに対するオタク的な感性にある。それにより、手の込んだ同人作品のような仕上がりになっているのだ。A Band Called Flashもそれと似たことを80年代のダンスミュージックで行っている。LinnDrum時代のPrinceの雰囲気や、François Kのダブミックス、ハウスのプロトタイプといった要素がプロジェクトと同名のセカンドEPにフィーチャーされている。『Stranger Things』と同様、本作の素晴らしいところは元ネタからの影響を巧みに処理しているところだ。彼らは耳に残る微細なメロディを頻繁に奏でる他、1981年にレコーディングされたような印象のサウンドが多い。実際、今年のDakmantelでAntalのプレイした"Phantom"を初めて聞いたとき、昔のレコードだと思わされた。 A Band Called Flashがこれほどクラシックなサウンドである理由は、バンドのエグゼクティブ・プロデューサーを務めるRon Trentにある。Trentはいつの時代においても有数のハウスプロデューサーだといって過言ではない。ハウスの誕生に立ち合い、初めて生で聞いたDJがRon Hardyだという彼は今でも欠かせない存在であり続けている。そんな彼の影響が本作のいたるところに行き渡っている。特に顕著なのが"Starfall"で、Trent作品に共通するベースとシンセの装飾を活気あるギターに組み合わせている。 "E.L.L.A."と"Volans"も同じく素晴らしいが、一番のおすすめは"Phantom"だ。このトラックをプレイすればどんなセットでも即座にムードが高揚するだろう。ミュージシャンシップも機能性と均整が取れている。使われているスラップベースとコードは、David Mancusoお気に入りの隠れた名作Level 42 "Starchild"に近いものがある。A Band Called Flashを魅力的にしているのは、オブスキュアなディスコらしさを新たに考案するこうした手腕だ。
  • Tracklist
      A1 Phantom A2 Starfall B1 Volans B2 E.L.L.A.
RA