Martyné & Jacob - Benza EP

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  • Traffic Recordsの前作はこれまでで特に素晴らしい1枚だった。そしてMartynè & Jacobが手掛けたレーベル最新作となる12インチも格別だ。収録の4曲は強烈さと気軽さを同時に実現している。いずれも機敏なベースラインを奇怪なメロディに組み合わせ、笑顔と錯乱を等しくもたらすトラックとなっている。ビートは素早く刻まれ、全体的なムードは浮ついてユーモラスですらある(A2のトラックタイトルはドイツの冷凍ビザに由来している)。しかし、その表面下では狂気が渦巻いている。不安な感覚が「Benza」のように楽しく聞こえる作品はこれまでに無かった。 Aサイドの2曲はどちらもはつらつとしていて意識を引き付けるトラックだが、その展開は沸々としている。"Frischfisch"のリードラインは苛立ったノミのように音場を跳ね回り、気持ちいい音色を奏でることは一度としてない。そうした奇妙さにもかかわらずトラックの中毒性は高いのは、控えめながらも極めて効果的な低域とビートアレンジのおかげだ。中盤になるとトランス風のメロディ要素によってさらに拍車がかかるので、上手くペース配分されたDJセットでは地味に効く定番曲として使えそうだ。"Oh, Mein Rustipani"でも同様の技が用いられており、リードラインは、まるで調子の悪いエレベーターの中で揺さぶられているStevie Wonderがクラビネットを弾いているかのようだ。ディテールは遊び心に溢れているが、シンコペートさせたベースラインによって音圧面でも満足のトラックになっている。 Bサイドの"Benza"はAサイドと調和した内容だが、より謎めいた雰囲気になっている。"Who's Snorki"はピンポン処理された808のカウベルと支離滅裂なストリート言語を使った、Bボーイにはたまらないブロークンビーツ・エレクトロだ。注目を集めるのはAサイドかもしれないが、1枚のEPとして奇妙なサウンドと抗えないグルーヴの絶妙なバランスが実現されている。「Benza」は奇抜さを損なうことなくダンスフロアでしっかりと機能する1枚だ。
  • Tracklist
      A1 Frischfisch A2 Oh, Mein Rustipani B1 Benza B2 Who's Snorki
RA