NHK yx Koyxen - Doom Steppy Reverb

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  • Kohei Matsunagaは予測不可能ながらも滅多にリスナーを失望させることのないアーティストだ。90年代前半から音楽を制作している彼は、Merzbow、Sensational、Mika Vainio、AutechreのSean Boothといったアーティストとコラボレーションを行ってきた。近年の彼はPANのようなレーベルからリリースを重ねながら、彼独自の活き活きとしたサウンドや(英語サイト)、レトロなレイヴサウンドを制作している他、Toshio MunehiroとのプロジェクトNHKでは実験的なコンピューターミュージックを展開している。DiagonalからMatsunagaにとって初となるアルバム『Doom Steppy Reverb』に先駆けて発表された実験的なテクノシングル数作品には一貫して数字の付されたダンスフロア仕様のダークなトラックが収録されていた。 制作名義を問わず、Matsunagaが本領を発揮するのは秩序と無秩序を衝突させているときが多く、とりわけ、それが緻密に行われているときに顕著だ。そして、それが大いに当てはまるのが『Doom Steppy Reverb』である。"1089s"の騒々しいキックを聴いてみてほしい。このキックを聴いていびつ過ぎると感じたとしても、数分後にはこれ以上のキックは無いように思えてくる。そして"1038 Lo Oct Short"の若干ズレたキックは単なるエラーではなく、Matsunagaによって完全に統制されており、シンコペートする"1073+Snare""でも魅力的にトラックを崩壊させることで朽ち果てたブレイクビーツへと変化させている。 『Doom Steppy Reverb』ではテクノの陰鬱な感覚が一貫しており、そこから離れていくことはあまりないが、ディテールに意識を漂わせると、奇抜な要素が溢れんばかりに提供されていることに気付くだろう。収録曲はシリアスで機能的に振る舞っているものの、そこには遊び心がある。イラストの描かれたジャケットデザインや3Dメガネでパフォーマンスを行うMatsunagaの一面を考慮すると、今回の音楽を生真面目に捉える方が難しい。『Doom Steppy Reverb』は他のNHK yx Koyxen作品に比べて特別異質なわけではなく、とりわけ技巧が凝らされているわけでも、色彩が豊かであるわけでもない。しかし、本作はその中間に位置する1枚だ。控えめなクールさがあり、少し偏執的で面白みに溢れている。
  • Tracklist
      01. 1073+Snare 02. 1089s 03. 1038 Lo Oct Short 04. Y 05. 1048 06. 1082 S 07. L 08. 1070s 09. 1759+
RA