Equiknoxx - Bird Sound Power

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  • GavsborgことGavin BlairのDiscogsページ(英語サイト)を見てみると、妙なことに気付くはずだ。ポーランドのレゲエアーティストEarl Jacobによる2013年のアルバムに、ジャマイカのプロデューサーであるBlairの名がボーカルとしてクレジットされているのだから。そのオープニングで彼は「壁についている照明スイッチみたいに、俺の脳みそのスイッチがオンになったり、オフになったりする。大きなキリン・・・、そう、オカピ! オカピみたいに! シマウマみたいな・・・」と狂ったようにしわがれた笑い声を立てる。『Bird Sound Power』はそこまで突飛ではないものの、シュールなイタズラが数多く散りばめられている。Gavsborgがプロデュースした1曲目"Last Of The Mohicans"では、ちらつくフルートや、眠たげなフクロウのように柔らかく囁くシンセの音色、そして、作り物の「あぁ」という声を使った上品なメロディなど、おかしなサウンドがダンスホールのビートに振りかけられている。30秒が過ぎると、ドラムの音が止まり、キザな声によるコーラスが批評家たちに向けて「うるさ型のみなさん、こんにちは。そして、さようなら」と呼び掛ける。 Blairがダンスホールのフォーマットを面白おかしく扱うのはこれが初めてではなく(彼はこれまでにBusy SignalやBeenie Manといったアーティストと制作を行っている)、彼の生み出すコミカルなドタバタサウンドは熟練の技によってしっかりと統制された状態で届けられている。他の収録曲と同様、タムの音、スネアロール、はじけるシェイカーといった素材はいずれも完ぺきに処理されており、奇妙な要素がきちんと計量された用量で配合されている。もちろん、ダンスホールのフォーマットで圧倒的なオリジナリティが表現されたのは、今回が初めてではない。Gavsborgと彼の悪友Time CowことJordan Chungによるトラックをまとめ、Demdike Stareのレーベルに提供された本作は、新世代のダンスミュージックファンにダンスホールのリアルなサウンドを伝えるアルバムになるだろう。 Blair、もしくは、Chungが制作したトラックも1曲目の路線に沿っており、多くの場合、ふたりの音楽スタイルを聞き分けるのは不可能だ。"Peanut Porridge"と"A Rabbit Spoke To Me When I Woke Up"では、ライドシンバルとキック、そして、散在するパーカッションの枠組みが最も効果的なダンスグルーヴを生み出すように配置され、か細いメロディがバランスよく奏でられる。"The Link"のビートにタイトなディレイがかけられることで弾力的な特性が増し、ウワものとしてジェットエンジンのノイズが吹き抜けている。唯一、BlairとChungが一緒にクレジットされている"Timebird"では、催事会場で流れているようなメロディに時折どう猛な鳥の鳴き声が挿入される(鳥の鳴き声はEquiknoxxの特徴的サウンドだ。そのため本作では『Bird Sound Power』というタイトルや鳥をモチーフにしたアートワークになっている)。ミニマルの傑作なのか、もしくは、奇抜ないたずらなのか? おそらくその両方なのだろう。 他のトラックでは、よりセンセーショナルなアイデアが組み込まれており、ハーフタイムにしたヘヴィなグルーヴが混沌すれすれの状態でよろめいている。"Clunk"、"Clink"、"Porridge Should Be Brown Not Green"といったトラックでは、グリッドから外れたつんのめるリズムが組まれ、一方で、ホラー映画のバイオリンや不協和に響くベルなどのサンプルネタが次々と放り込まれる(Silver Applesによる"Oscillations"の影響をうかがえる)。こうした圧倒されそうなアレンジが施されている一方で、落ち着く時間を提供するメロディアスなトラックも用意されている。例えば、"I Really Want To Write On Her Purple Wall"のクラビコードにはNeptunesの雰囲気が漂っている。そして、蒸気のようなコードと甲高いボーカルの組み合わせによって柔らかな光が放たれるラストトラック"Congo Get Slap Like A Congo Get Slap"は、まばゆいトラックが数多く収録された奇妙で魅惑的なアルバムを締めくくる美しい1曲となっている。
  • Tracklist
      01. Last Of The Mohicans 02. Clunk 03. Peanut Porridge 04. Someone Flagged It Up!! 05. Porridge Should Be Brown Not Green 06. A Rabbit Spoke To Me When I Woke Up 07. The Link 08. Clink 09. Timebird 10. I Really Want To Write On Her Purple Wall 11. Lizard Of Oz 12. Congo Get Slap Like A Congo Get Slap
RA