Various - Avocado Dreams

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  • 現在、アボカドが大ブームになっている。ヨーロッパでは恐ろしく需要が高まり(英語サイト)、ニュージーランドでは強盗まで発生するほどだ(英語サイト)。「Avocado Dreams」をこの狂騒に対する叙情歌だと思うなら、おそらく、ライプツィヒのKann Recordsを知らないということだろう。いつも落ち着いた作品を発表している同レーベルだが、その基準からみても、最新作となるコンピレーションEPは極めて控えめだ。4人の楽曲提供者のほとんどはKannに初登場するアーティストだが、彼らの明かりに照らされたようなムードは聞きなじみのあるもので、4者それぞれ異なる方法でハウスミュージックを柔らかく微かに悲しげな子守歌に変化させている。 "Cenote"によりゆっくりと加速していくのはGieglingのLeafar Legovだ。颯爽としたパッドが映画のようなクライマックスへと構築された後、9分間に渡って心地よく散っていく。レーベルの設立者のひとりBenderも"Think Green"で同じくベーシックな構造を生み出しているが、こちらはそれほど上手くキマっていない。パーカッションは少し足取りが重く、コードに十分な深みが無いため、スムーズな状態からズルズルとラフに進行していく展開に適していない。 Mary Yalexによる"Bellflowers + Unicorn"では、そうしたシンプルでドラマティックな軌道さえも取り除かれている。それに代わり、歯切れのいいシェイカーとサイドスティックが微かに震えながら展開していき、羽のように軽いシンセパターンがループしながら回転した後を奇妙なストリングスのコードが漂っている。繊細なアレンジメントはコンプレッサーによって引き伸ばされている。あらゆる素材がキックドラムの向こう側に押し込まれ、ブレイクでは突如全面に飛び出してくる。とびぬけて変わっているのがMatt Karmilの"Love Letter"だ。荒涼とした無気力な『Ghettoville』のテンプレートとしてActressがディープハウスを使っていたなら、このトラックみたいになっていたかもしれない。ヴァイナルのパチパチという音やピアノ、そして、5分間にわたって変化することなく繰り返される判別不可能な声を素材にして、ピッチを落としたループが生まれている。僕が見るアボカドの夢は少しだけキワどいのだ。
  • Tracklist
      A1 Leafar Legov - Cenote A2 Bender - Think Green B1 Mary Yalex - Bellflowers + Unicorn B2 Matt Karmil - Love Letter
RA