Ivic - You Cannot See Me From Where I Look At Myself

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  • アーティストが自分自身のニッチな居場所を切り開く様子を見られるのはとても素晴らしいことだ。もともとベルリンに住み、最近トリノに移住したSaele Valeseはたった2枚のレコードでそれを成し遂げている。2014年後半、Hard Waxに現れた彼のファースト12インチ「In Your Rosary」を構成していたのは、抑制とニュアンスが際立っていたディープなドローンテクノ2曲だった。特に同12インチが意識をわしづかみにしたのは、Alva Noto、Felix K、Svrecaだった。彼の新作である4曲入りのEP「You Cannot See Me From Where I Look At Myself」も自身のレーベルJSMЁからリリースされており、あらゆる面でさらに洗練されている。 「In Your Rosary」と同様、今回の収録曲もタイトルが付けられておらず、目につく要素はEP名とValeseの鮮烈な自画像のみだ。ダークでゆっくりと変化していくドローンと残響が濃密な雰囲気をもたらし、一方でパーカッション面は軽く精巧になっている。A1ではまばらで歪んだブロークンビーツ上を不気味な空気がツタのように伸びていき、ミニマルな4つ打ちのリズムによって勢いにのるA2では張り詰めた洞窟のようなグルーヴに特化している。B1は洗浄するようなダークアンビエントだ。ノイズによる低域の衝撃は遠く離れたインダストリアルな基盤が崩壊している様を思わせる。「You Cannot See Me From Where I Look At Myself」における一番の聴き所はB2だ。抑えつけたパーカッションの鼓動と美しく朽ちていくパッドにより琴線に触れる凋落が生まれている。Valeseの作品からは強い目的意識が容易に感じられる。まだ見ぬ何かが待ち受けているかのように、それがどんなに謎めいたものであったとしてもだ。
  • Tracklist
      A1 Untitled A2 Untitled B1 Untitled B2 Untitled
RA