Mark Barrott - Cascades

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  • 今になって振り返ってみると、Mark Barrottの行きつく先はいつもイビザだった。バレアリックを愛するレーベルInternational Feelの主宰者として、そして、90年代以降のチル・エレクトロニックミュージックの提供者として、彼は”白い島"に辿りつくずっと前から、同地に惹かれるものを確かに感じていた。今やイビザをホームにしている彼の作品は、実り多き新たな段階へと突入している。のどかなロケーションで捉えたフィールドレコーディングとかすむシンセを結び付けた『Sketches From An Island』シリーズは(英語サイト)、何年もバレアリックサウンドを行き交ってきたアーティストによる極めてハイクオリティな作品だ。Barrottの最新作は同シリーズとしてのリリースではないが、違いはそれだけに過ぎない。わずかにキッシュさを抑えたサウンドチョイスだが、恍惚とした至福のムードは一切干渉されていない。 Bサイドの"Tago Mago"からうかがえるのは、Barrottが今でも第二の故郷イビザからインスピレーションを得ていることだ。トラックタイトルを見てまず思い出すのはCanによる1971年のLPだが(Barrottの音楽にはコズミッシェの要素が程よく存在している)、このタイトルはイビザの沿岸部から少し外れた場所にあるアイランドリゾートの名前でもある。このトラックは良い意味で目的が定まっておらず、バウンシーなコンガのフレーズ、ストリングス、ウィンドパッチ、ベースギターといったサウンドが次々と優雅に気だるく舞っていく。それにより、色彩豊かで混沌とした効果が生まれており、Barrottが背景で自由に鳴らしている鳥の鳴き声によるコーラスに似ていなくもない。一方で、変化をつけているのが"Cascades"だ。急降下するリードと、くぐもったアルペジオがゆっくりと互いに転がり合っていく中、軽快なハイハットと奇妙なタムが鼓動を生んでいる。しかし、そこから完全なビートに発展していくことはない。既に心地いい空間が広がっているなら、そこから変化していく必要はないのだ。
  • Tracklist
      A Cascades B Tago Mago
RA