Marcel Dettmann - MDR019

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  • DJをするプロデューサーがツアーに出るほど有名になると、通常、制作時間が少なくなる。それは成功につきまとう避けて通ることのできないものだと言えるだろう。Marcel DettmannはDJとしてかつてなく多忙で、この3年間、ソロ作品をリリースせず、少数のリミックスを発表するのみに留まっていた。突如、発表された彼の新しい12インチ「MDR019」が重要に感じられるのはそのためだ。4曲の新たなオリジナルトラックが収録されており、いずれにおいてもDettmann独自のスタイルが貫かれている。つまり、鉄のように冷たく、リスナーの意識を掴み続けるきらめく光がちらついているということだ。 おそらく"新しい"という言葉は完全に当てはまらないだろう。賢明なテクノファンなら"Onto"がBen Klockのミックス『Berghain 04』(英語サイト)で使われていたことに気付くはずだ。同ミックスで"RoHd"と名付けられ、ACTという名義にクレジットされていたトラックである。今回のバージョンに"2010 Edit"と付けられているのも、それで説明が付く。トラックの起源はさておき、"Onto"はあとを引くスウィング・ドラムパターンと素晴らしいコード進行によって炸裂する。このコード進行によって照らし出されなければ、トラックは骨格だけのものになっていただろう。 他の3曲は黒曜石のようにきらめくツールトラックだ。中でも"Nautilus"が素晴らしく、伝統的なOstgut Tonスタイルのテクノから切り取られた1曲だ。"Escape"はエンジン室の轟く雰囲気を捉えた簡易なトラックだ。一方、"Foundry"ではダブの空気と漠然としたトライバルなドラムによって水中グルーヴが紡がれている。どちらのトラックも澱んだ雰囲気を覆い隠すほどの素晴らしい制作理念によって構築されている。いずれのトラックも意識を競って捉えようとしているわけではないが、Dettmannによる傑作がそうであるように、こちらも深みとディテールを存分に感じさせる。
  • Tracklist
      A1 Onto (2010 Edit) A2 Escape B1 Nautilus B2 Foundry