Pita - Get In

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  • Editions Megoのボスとして知られるPeter RehbergことPitaが1999年から2004年までの間に制作した3枚のアルバム、『Get Out』、『Get Down』、『Get Off』は今も新鮮な響きを保ち続けている。Rehbergはノイズやテクスチャーを切り刻んで再編成することで、忙しなく予測不可能でありながら、堅牢な作品を生み出していた。彼が見せる日常的な多様性の中には皮肉めいたユーモアがあったが、どのトラックにもリアルな重みがあった。彼の音楽はじわじわと展開する。それは目新しさを伴うときでも変わらなかった。 12年ぶりとなるPitaのアルバム『Get In』でも、そうした特徴が引き継がれているが、さらにじわじわとした展開へと傾倒している。本作は驚きというよりも繰り返しであり、活動的というよりも瞑想的だ。多くのトラックがゆっくりと静かに始まり、中には完全に抑制されているものもある。掴みどころのないオープニングトラック"Fvo"は、音量ノブがゼロを一切超えないかのように静かだ。一方、"Aahn"におけるちょっとしたドローンや囁くようなグリッチは遥か彼方からこだましてくる戦争を思わせる。 『Get In』のもっと大音量で大胆な作品からすらも統一された静けさが発せられている。印象的なのは、Rehbergはそうした静けさを保ちながら、10年以上前と同じく、音の多様性を創り出していることだ。泡立つシンセ、旋回する音色、静止ノイズのフィールド、教会の鐘のようなチャイム、波を模した重々しい電子音など、多様な音が生み出されている。"9U2016"では1曲の中に多くの要素が含まれており、その過程の中で崩壊してしまいそうな脅威を感じさせる。しかし、減衰していくサウンドの破片からはじわじわとしたアレンジが貫かれていることが分かる。 『Get In』で最も驚かされるのは、表向きには最も普通に思えるトラックだ。10分以上に渡るラストトラック"Mfbk"は、本作で最も長いだけでなく、最も集中的な1曲だ。Rehbergは、高貴で非常にゆっくりと変化するドローンを作り上げ、それを溶かし合わせて、Pitaにとって初めて純粋にアンビエントと呼べるトラックを生み出している。Pitaの過去作品のいずれにおいても異色に映るであろう"Mfbk"は、『Get In』では完ぺきなコーダとなる。ここではRehbergの雄大な静けさが本質部分にまで煮詰められている。
  • Tracklist
      01. Fvo 02. 20150609 03. Aahn 04. Line Angel 05. S200729 06. 9U2016 07. Mfbk
RA