Margaret Dygas - Even 11

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  • Perlonから発表されたMargaret Dygasの最新12インチを何も知らずに聞くと、キマりまくったSkull Discoのトラックだと勘違いするかもしれない。確かに収録曲にはサウンドクラッシュの勝負に勝つだけの低域の音圧と開けたスペースがある。しかし、ソウルのネタを統合失調症的にコラージュしたものや、アコースティックな素材、しなやかな打ち込みも取り入れられていることにより、「Even 11」は完全に独自のものに仕上がっている。Dygasの作品は孤高なまでに大胆で奇妙に感じられるものばかりだ。実際に彼女のトラックがダンスフロアを美しく混乱に導く光景を目の当たりにするまでは、その雰囲気と構造があまりにも特異に思えてしまうのだが、「Even 11」はDygasにとって特筆すべき作品に感じられる。お世辞抜きでダンスミュージックシーン屈指のレーベルとして評価を集めるPerlonにとっても、それは同じだ。 Bサイドのトラックは沈んだ状態から浮かび上がることがなく、潜むような重々しい雰囲気により、ずるずると引きずり込まれていく。巧みに打ち込まれた生ドラムと眠たげな低音パルスが微かに聞こえる背景音の上で踊るように丁寧に絡み合いながら、Moritz Von Oswaldの傑作を思わせる優美な11分間を実現している。バンドメンバーが互いの動作に反応しながらパフォーマンスしているような感覚は、一個人によって制作されたトラックでは実に鮮烈な印象を生み出す。 同様のことは表題曲にも当てはまる。"Even 11"では鈍く仕上げられた低域に、アタック部分を適切に柔らかく処理したパンチのあるキックを組み合わせただけにもかかわらず、機敏性が増している。しかし、それは自由に処理できるスペースが存分に確保されることの一因となっており、叩きつけるのではなく鼓動させることで、リズムのインパクトがさらに関連し合ったものになるだけでなく、ボーカルサンプルの存在感が際立っている。結果、グルーヴは非常に流動的で、Dygasはありえないほど長い時間をかけて緊張感と戯れながら、エレクトロ、ブレイクビーツ、ミニマルのフレーバーを加えることが可能となる。5分を過ぎるころになると808のハイハットが追加されるが、開放的な場面が訪れることは一度もない。しかし、この音楽旅行がもたらす快楽は滅多に味わえないものだ。
  • Tracklist
      A1 Even 11 A2 Loop 1 B1 Wishing Well B2 Loop 2
RA